ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

二月には、俺が失敗した。

取引先に頼まれた資料を、確認もせず「明日までに送れます。」と答えてしまった。
別の部署に数字を出してもらう必要があって、俺一人で決められることじゃなかった。

神崎さんに報告し、納期を相談し直した。
取引先にも、社内にも頭を下げた。

その夜、凛から電話がかかってきた。

「今、大丈夫?」

「うん。今日、早かった?」

「今日はね。夏樹くんは?」

「俺も。普通。」

少し間が空いた。

「……何かあった?」

「え。」

「いつもなら、もう少ししゃべるから。」

ばれていた。
俺はソファに座り直した。

「ちょっと、仕事でやらかした。」

話し始めると、思ったより情けない声になった。
できると思ったことも、相手を待たせたくなかったことも。
結局、確認を面倒がったんじゃないかということまで話した。

凛は、途中で口を挟まずに聞いていた。

「もうすぐ後輩も入ってくるのにさ。俺、何やってんだろって。」

「うん。」

「……かっこ悪いな、これ。」

「失敗した話をするのが?」

「それも。凛だって忙しいのに、愚痴聞かせてるし。」

「私、この前うどん食べながら、いっぱい聞いてもらったけど。」

「あれはいいんだって。」

「じゃあ、私もいいよ。」

すぐに言い返されて、俺は黙った。

「夏樹くんに話したら、少し楽になったの。私にも話してほしい。」

スマホを持ち直した。

「……神崎さんみたいに、ちゃんと任せてもらえるようになりたいんだよ。でも、焦ると逆のことしてる。」

「うん。」

「今日、それが悔しかった。」

言葉にして、ようやくわかった。
少しはできるようになったつもりでいた自分が、恥ずかしかった。

「明日は、どうするの?」

「頼んだ部署に進み具合を確認する。次からは、できるか確かめてから返事する。」

「そっか。」

凛は、気にしなくていいとは言わなかった。

「今日は、ご飯食べた?」

「……まだ。」

「何か食べながら話そう。私も今からだから。」

冷凍庫を開けると、うどんが残っていた。

「俺、うどんにする。」

「卵は二個?」

思わず笑った。

「うん。今日は二個。」

◇

三月の半ば、田中と久しぶりに昼飯を食べた。

「明日、空いてる?」

「いや。美奈と出かける。」

箸が止まった。

「……二人で?」

「そうだけど。」

「どこに?」

「映画。あいつが見たいのあるって。」

身を乗り出すと、田中が先に言った。

「お前、変な連絡すんなよ。」

「まだ何も言ってないじゃん。」

「顔が言ってる。」

翌日の夕方、凛と駅前を歩いていたら、その二人を見かけた。

美奈がスマホを見せると、田中が一軒の店を指した。
美奈は頷いて、その袖を軽く引いた。
二人は並んで店に入っていった。

「……声、かけないの?」

「あとで聞く。」

「ほどほどにね。」

釘を刺されたけど、凛も少し笑っていた。

◇
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