ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

三月の終わり。
二人とも帰りが遅くて、俺の部屋で弁当を食べた。
凛が袋から即席の味噌汁を取り出し、俺が湯を沸かした。

「今日、作る気力なかった。」

「私も。買って帰ろうって言ってくれて助かった。」

凛は割り箸を一膳、俺のほうへ置いた。

食後、味噌汁の器を流しに運ぶと、朝のマグカップが残っていた。

「うわ。これもあった。」

「私が洗うよ。」

「いいの?」

「うん。夏樹くん、お湯沸かしてくれたし。」

「それ、ボタン押しただけだけど。」

「じゃあ、拭く係。」

渡された布巾を受け取った。

並んで立つと、やっぱり狭かった。
凛が引き出しに手を伸ばしたので、一歩横にずれた。

「今日は気づいたね。」

「学習してるから。」

凛が笑った。

疲れたと言えて、手が空いているほうが動く。
二人とも無理なら、弁当を買って帰る。
こんな夜を、これからも一緒に過ごしたかった。

凛を駅まで送って部屋に戻ると、流しの横にマグカップが二つ並んでいた。
さっき凛が洗って、俺が拭いたものだった。

椅子に座り、スマホの予定表を開いた。

もうすぐ四月だった。
社会人になって一年。
そして、凛と初めて会ってから、三年になる月でもあった。

大学三年の春。
サークルの飲み会で、小柄な凛を見て、俺は「え?中学生?」なんて口にした。

今思い出しても、ひどい第一声だった。
あのときの俺に、もう少し考えてからしゃべれと言ってやりたかった。

きっと想像もできなかっただろう。
あの日、失礼なことを言った相手を、本気で好きになることも。
三年後には、仕事で失敗した話を聞いてもらっていることも。

凛の前では、かっこよくいたかった。
その気持ちは今もあった。
でも、うまくいかなかった日にも会いたいと思うようになっていた。

凛にも、そんな日に会いたいと思ってもらえたら嬉しかった。

俺は予定表に目を戻した。
同じ家に帰るようになる前に、ちゃんと伝えたかった。

四月に、凛に結婚を申し込もう。

三年前、初めて会った月に。
今度は、これからも一緒にいてほしいと。

スマホを持つ手に、少し力が入った。

あの日みたいに、思いつくまま口にするんじゃなく。
凛の顔を見て、伝えたい言葉だった。



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