ノンデリ男の敗北 ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~
お茶を出してもらっても、すぐには手を伸ばせなかった。
凛の両親が向かいに座る。
俺は膝の上で手を揃え、顔を上げた。
「先日、凛さんに結婚を申し込んで、承諾してもらいました。」
一度、隣を見た。
凛が小さく頷いた。
「二人で、結婚に向けて準備を進めたいと思っています。」
凛も両親を見た。
「私も、夏樹くんと結婚したいと思ってる。」
お母さんが、ふっと表情を緩めた。
お父さんは頷いてから、俺たちを交互に見た。
「そうか。これからのことは、何か考えているの?」
「結婚の前に、一緒に暮らし始めたいと思っています。今日は、そのこともお話ししたくて。」
家賃は、二人で決めた上限の範囲で探すこと。
通勤時間が、どちらかだけ長くならない場所にすること。
引っ越しに必要なお金と、結婚に向けた貯金は分けて考えていること。
途中で凛が説明を足してくれた。
「まだ部屋は決めてないけど、夏頃を目安に探そうって話してるの。」
「仕事と家のこと、二人でできそう?」
お母さんに聞かれ、俺は頷いた。
「はい。俺が全部――」
言いかけて、止まった。
隣で凛がこちらを見ていた。
「……じゃなくて。二人で相談します。忙しい日もあると思うので、その都度。」
凛が少し笑った。
「私も、全部任せるつもりはないから。」
お父さんは俺たちを見て、口元を緩めた。
「それなら、困ったときも二人で話すようにね。」
「はい。」
返事をしてから、ようやくお茶を飲んだ。
思っていたより喉が渇いていた。
◇