ノンデリ男の敗北 ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~
日曜日の夜。
食卓には、式場から届いた資料が広がっていた。
凛が予定表を見ながら、眉を寄せた。
「次の打ち合わせまでに、決めること多いね。」
「うん。招待する親戚の住所、まだ父さんから返事来てない。明日もう一回聞く。」
手元のメモに書き足してから、花の写真が載った資料を開いた。
「あと、これ見てたんだけど。」
凛が顔を上げた。
「テーブルの花?」
「そう。高いと向かいの人の顔、見えにくくない? みんなにもゆっくりしゃべってほしいし、こっちの低いやつがいいなって。」
「私も、それがいいと思ってた。」
「色は? 凛、白だけより、黄色も入れたい?」
一緒に花屋へ行った日、凛が迷っていた花を思い出した。
凛は写真を見比べて、淡い黄色の入ったものを指した。
「こういうの、好き。でも、夏樹くんは?」
「俺も好き。明るい感じで。あと、料理置く場所は残したい。」
「そこも大事なんだね。」
「かなり。」
凛が笑い、候補の横に小さな丸をつけた。

「あとさ。全部は難しくても、俺たちの席の前に置く花とか、ブーケトスの花は、いつもの花屋でお願いできないかな。」
凛がペンを止めた。
「最初に、スズランを買ってくれたお店?」
「うん。結婚式の花も、あそこで選べたら嬉しいなって。凛はどう?」
「……私も、お願いしたい。今度は、二人で相談に行きたいな。」
「じゃあ、まず式場に聞いてみる。持ち込めるかとか、費用とか。」
「お花屋さんにも、引き受けてもらえるか聞かないとね。」
俺は確認することをメモに足した。
初めてあの店に入ったときは、凛に花を渡す理由を探していた。
今度は隣に凛がいて、二人の結婚式のために選ぼうとしていた。
ページをめくると、追加料金の一覧があった。
二人で予算のメモと見比べ、聞きたいことを書き出した。
途中で、凛が時計を見た。
「あ、もうこんな時間。明日の準備もしなきゃ。」
まだ、招待状の見本が残っていた。
「今日はここまでにしよ。返事、来週で大丈夫だし。」
「でも、平日だとまた忙しくなるかも。」
「じゃあ、土曜の午前中は? 俺、その時間空けとく。」
凛も予定表を確かめて頷いた。
俺は二人の予定に『招待状を選ぶ』と入れた。
式場への確認も忘れないよう、自分の予定に書き足した。
招待状の見本を重ねていると、凛が一枚に手を止めた。
「これもきれいだよね。さっきは、こっちがいいと思ったんだけど。」
「凛でも、そんな迷うんだ。」
口にしてから、凛を見た。
「……ごめん。こういうの、すぐ決められると思ってた。」
「調べるけど、迷うよ。初めてだし。」
凛の前には、何度か消した跡のあるメモがあった。
「うん。俺も迷ってる。二つまでしか絞れなかった。」
「どれ?」
候補を並べると、凛は俺の隣へ椅子を寄せた。
「こっちは、花の色と合いそうだと思って。もう一個は、文字が読みやすかった。」
「ほんとだ。おじいちゃんたちにも、こっちのほうが読みやすそう。」
二人で見比べてから、候補の二枚をいちばん上に重ねた。
続きは土曜日。
そう決めて、今度こそ資料を片づけた。
◇