そこにあったはずの愛
番外編2
番外編1「壊せない関係」凛編
出会って、もう一年が経とうとしていた。
玲依のマンションを訪れるのは、もう何度目か分からない。
いつものように、玄関を開けると、すでにシャワーを終えた玲依が待っていた。
「シャワー浴びてきて」
短い言葉。
儀式のように繰り返される、いつもの流れだった。
浴室に入り、シャワーを浴びる。
一人になる、この数分間。
いつからか、この時間だけが、妙に頭が冴えるようになっていた。
これで、本当にいいのか。
シャワーの音に紛れて、そんな問いが、頭の中で繰り返される。
金づるのふりをして、この関係に入り込んだ。
軽い男を演じて、本気だと思われないように、ずっと自分を偽ってきた。
けれど、本当は。
出会った瞬間から、誰よりも、この人に惹かれていた。
その事実を、誰にも、玲依本人にすら、言えずにいる。
言えば、壊れてしまう気がした。
この、辛うじて成り立っている関係が。
体だけの繋がり。
条件だけで結ばれた、歪んだ形。
それでも、繋がっていられることの方が、今は大事だった。
シャワーを止めて、体を拭く。
鏡に映る自分の顔を、しばらく見つめた。
こんな顔で、あの人の前に立っているのか。
本音を隠したまま、平気な顔で。
部屋に戻ると、玲依が、ベッドの端に座っていた。
いつも通りの、感情の読めない表情。
けれど、その奥に、微かな疲れのようなものが滲んでいる気がした。
近づいて、頬に手を伸ばす。
指先が、肌に触れる寸前。
もし今、少しでも嫌がる素振りを見せてくれたら。
そうすれば、止まれるのに。
この関係を、これ以上進めなくて済むのに。
そんな考えが、一瞬、頭をよぎった。
けれど、玲依は、何も拒まなかった。
ただ静かに、目を伏せるだけ。
その従順さが、かえって胸を締めつけた。
拒まれない代わりに、望まれてもいない。
そんな気がしてならなかった。
この人は、何を思って、自分を受け入れているのだろう。
体だけの契約を、どんな気持ちで守っているのだろう。
問いたくても、問えなかった。
問えば、答えを聞くことになる。
その答えが、今の均衡を、壊してしまうかもしれないから。
頬に触れた指先を、そのまま滑らせる。
輪郭をなぞりながら、心の中では、まったく違うことを考えていた。
いつか、この歪んだ関係は、終わるのだろうか。
それとも、このまま、歪んだままでも、続いていくのだろうか。
答えは、まだ、どこにもなかった。
ただ一つ、はっきりしていることがあった。
この人を、手放すことだけは、どうしてもできない。
歪んでいても、偽りだらけでも、今はまだ、この繋がりを失うことの方が、ずっと恐ろしかった。
そうして今日もまた、本音を隠したまま、夜が更けていく。
いつか、この偽りの関係が、本物に変わる日が来るのだろうか。
その答えを知る術は、まだ、どこにもなかった。
出会って、もう一年が経とうとしていた。
玲依のマンションを訪れるのは、もう何度目か分からない。
いつものように、玄関を開けると、すでにシャワーを終えた玲依が待っていた。
「シャワー浴びてきて」
短い言葉。
儀式のように繰り返される、いつもの流れだった。
浴室に入り、シャワーを浴びる。
一人になる、この数分間。
いつからか、この時間だけが、妙に頭が冴えるようになっていた。
これで、本当にいいのか。
シャワーの音に紛れて、そんな問いが、頭の中で繰り返される。
金づるのふりをして、この関係に入り込んだ。
軽い男を演じて、本気だと思われないように、ずっと自分を偽ってきた。
けれど、本当は。
出会った瞬間から、誰よりも、この人に惹かれていた。
その事実を、誰にも、玲依本人にすら、言えずにいる。
言えば、壊れてしまう気がした。
この、辛うじて成り立っている関係が。
体だけの繋がり。
条件だけで結ばれた、歪んだ形。
それでも、繋がっていられることの方が、今は大事だった。
シャワーを止めて、体を拭く。
鏡に映る自分の顔を、しばらく見つめた。
こんな顔で、あの人の前に立っているのか。
本音を隠したまま、平気な顔で。
部屋に戻ると、玲依が、ベッドの端に座っていた。
いつも通りの、感情の読めない表情。
けれど、その奥に、微かな疲れのようなものが滲んでいる気がした。
近づいて、頬に手を伸ばす。
指先が、肌に触れる寸前。
もし今、少しでも嫌がる素振りを見せてくれたら。
そうすれば、止まれるのに。
この関係を、これ以上進めなくて済むのに。
そんな考えが、一瞬、頭をよぎった。
けれど、玲依は、何も拒まなかった。
ただ静かに、目を伏せるだけ。
その従順さが、かえって胸を締めつけた。
拒まれない代わりに、望まれてもいない。
そんな気がしてならなかった。
この人は、何を思って、自分を受け入れているのだろう。
体だけの契約を、どんな気持ちで守っているのだろう。
問いたくても、問えなかった。
問えば、答えを聞くことになる。
その答えが、今の均衡を、壊してしまうかもしれないから。
頬に触れた指先を、そのまま滑らせる。
輪郭をなぞりながら、心の中では、まったく違うことを考えていた。
いつか、この歪んだ関係は、終わるのだろうか。
それとも、このまま、歪んだままでも、続いていくのだろうか。
答えは、まだ、どこにもなかった。
ただ一つ、はっきりしていることがあった。
この人を、手放すことだけは、どうしてもできない。
歪んでいても、偽りだらけでも、今はまだ、この繋がりを失うことの方が、ずっと恐ろしかった。
そうして今日もまた、本音を隠したまま、夜が更けていく。
いつか、この偽りの関係が、本物に変わる日が来るのだろうか。
その答えを知る術は、まだ、どこにもなかった。