そこにあったはずの愛
番外編7-2「初めて眠った夜」玲依編
シャワーを終えた凛が、隣に腰を下ろした。
いつも通り、これから始まるのだと思っていた。
けれど、しばらくして聞こえてきたのは、穏やかな寝息だった。
視線を向けると、凛の瞼は、もう完全に閉じていた。
疲れきった顔。
けれど、その寝顔は、驚くほど穏やかだった。
じっと見つめているうちに、胸の奥が、じわりと痛んだ。
体だけの関係。
そのはずなのに、今、目の前にあるのは、ただ守ってあげたくなるような、無防備な寝顔だった。
これが、本当に契約だけの関係なのだろうか。
そんな疑問が、初めて、はっきりとした痛みを伴って浮かんだ。
起こす気には、なれなかった。
そっと、凛の体をソファに横たえた。
軽く整えた体勢のまま、傍にあったブランケットを、そっとかけた。
いつか、こういう風に、抱かれなくても会える日が来るのだろうか。
そんな考えが、頭をよぎった。
自分でも、滑稽だと思った。
条件を提示して、体だけの関係を望んだのは、他でもない自分自身だったのに。
寝室に移動して、ベッドの端に腰を下ろした。
今夜は、抱かれるはずだった。
けれど、その予定は、静かに崩れてしまった。
体の奥が、まだ熱を持っていた。
満たされないまま、眠れそうになかった。
横になっても、天井を見つめるだけの時間が続いた。
どれくらい、経っただろうか。
リビングの方で、微かな物音がした。
凛が、目を覚ましたのだろう。
心臓が、静かに音を立てた。
声をかけようか、迷った。
けれど、もし何か聞かれたら。
なぜ起こさなかったのか、なぜブランケットをかけたのか、と問われたら。
答える言葉を、持っていなかった。
寝たふりをすることにした。
目を閉じて、呼吸を整える。
まるで、深く眠っているかのように。
寝室のドアが、静かに開く気配がした。
視線を感じた気がした。
けれど、凛は、何も言わなかった。
声をかけることも、部屋に入ってくることもなく、ドアは、また静かに閉じられた。
どうして、起こしてくれないのだろう。
閉じた目の奥で、そんな問いが、静かに渦を巻いていた。
しばらくして、玄関の鍵が閉まる音がした。
その音が、いつもより、ずっと重く響いた。
寝室を出て、リビングに向かった。
テーブルの上に、一枚のメモが置かれていた。
『今日は帰る』
短い、その一言。
飾り気のない文字を、何度も見つめた。
痛かった。
理由も、言い訳も、何も添えられていない、その素っ気なさが。
契約だけの関係のはずなのに、こんなに胸が痛むのは、なぜなのだろう。
答えを、まだ、自分自身にも許せずにいた。
メモを、そっとテーブルに戻し、静まり返った部屋の中で、しばらく立ち尽くしていた。
シャワーを終えた凛が、隣に腰を下ろした。
いつも通り、これから始まるのだと思っていた。
けれど、しばらくして聞こえてきたのは、穏やかな寝息だった。
視線を向けると、凛の瞼は、もう完全に閉じていた。
疲れきった顔。
けれど、その寝顔は、驚くほど穏やかだった。
じっと見つめているうちに、胸の奥が、じわりと痛んだ。
体だけの関係。
そのはずなのに、今、目の前にあるのは、ただ守ってあげたくなるような、無防備な寝顔だった。
これが、本当に契約だけの関係なのだろうか。
そんな疑問が、初めて、はっきりとした痛みを伴って浮かんだ。
起こす気には、なれなかった。
そっと、凛の体をソファに横たえた。
軽く整えた体勢のまま、傍にあったブランケットを、そっとかけた。
いつか、こういう風に、抱かれなくても会える日が来るのだろうか。
そんな考えが、頭をよぎった。
自分でも、滑稽だと思った。
条件を提示して、体だけの関係を望んだのは、他でもない自分自身だったのに。
寝室に移動して、ベッドの端に腰を下ろした。
今夜は、抱かれるはずだった。
けれど、その予定は、静かに崩れてしまった。
体の奥が、まだ熱を持っていた。
満たされないまま、眠れそうになかった。
横になっても、天井を見つめるだけの時間が続いた。
どれくらい、経っただろうか。
リビングの方で、微かな物音がした。
凛が、目を覚ましたのだろう。
心臓が、静かに音を立てた。
声をかけようか、迷った。
けれど、もし何か聞かれたら。
なぜ起こさなかったのか、なぜブランケットをかけたのか、と問われたら。
答える言葉を、持っていなかった。
寝たふりをすることにした。
目を閉じて、呼吸を整える。
まるで、深く眠っているかのように。
寝室のドアが、静かに開く気配がした。
視線を感じた気がした。
けれど、凛は、何も言わなかった。
声をかけることも、部屋に入ってくることもなく、ドアは、また静かに閉じられた。
どうして、起こしてくれないのだろう。
閉じた目の奥で、そんな問いが、静かに渦を巻いていた。
しばらくして、玄関の鍵が閉まる音がした。
その音が、いつもより、ずっと重く響いた。
寝室を出て、リビングに向かった。
テーブルの上に、一枚のメモが置かれていた。
『今日は帰る』
短い、その一言。
飾り気のない文字を、何度も見つめた。
痛かった。
理由も、言い訳も、何も添えられていない、その素っ気なさが。
契約だけの関係のはずなのに、こんなに胸が痛むのは、なぜなのだろう。
答えを、まだ、自分自身にも許せずにいた。
メモを、そっとテーブルに戻し、静まり返った部屋の中で、しばらく立ち尽くしていた。