そこにあったはずの愛
第十七話 早すぎる既読
画面に浮かんでいたのは、たった三文字だった。
「いいよ」
拍子抜けするほど、あっさりとした言葉だった。
玲依は、その短さに、一瞬安堵しかけた。
けれど、すぐに引っかかりを覚えた。
送信してから、まだ一分と経っていなかった。
三年間、こんなに早く既読がついたことなど、一度もなかった気がする。
いつもなら、数十分、時には数時間。
こちらが痺れを切らしかけた頃に、ようやく返ってくる。
それが当たり前の距離感だった。
なのに今夜は、まるでスマホを握りしめて待っていたかのような速さだった。
――
素っ気ない三文字を返すのに、これほど間を置かずに反応する必要が、どこにあるだろう。
まるで、返事を考えるよりも先に、指が動いてしまったかのような速さだった。
――
玲依は、画面を見つめたまま、静かに考える。
言葉は、抑えられている。
けれど、反応速度だけが、その抑制からこぼれ落ちている。
聡明であることは、時に厄介だった。
見なくていいものまで、見えてしまう。
気づかなくていいことにまで、気づいてしまう。
凛は今、画面の向こうで、どんな顔をしているのだろう。
想像しかけて、玲依はその先を止めた。
想像すれば、また新しい感情が生まれてしまう気がした。
――
「いつがいい?」
事務的な文面が、続けて届く。
「土曜の夜」
そう返すと、また間を置かずに返信が来た。
「了解」
「どこ行く?」
短いやり取りが、テンポよく続いていく。
行き先を決める、ただそれだけのやり取りのはずなのに、その端々に、どこか浮ついた気配が滲んでいる気がした。
普段の凛なら、もう少し気だるげな返し方をする。
なのに今夜は、まるで即答を用意していたかのように、返信が続く。
その温度差に、玲依はまた小さく心を掻き乱された。
――
行き先と時間を決め終え、玲依はスマホを膝の上に置いた。
窓の外、遠くの街灯が滲んで見える。
三年間、一度も踏み込まなかった領域に、初めて足を踏み入れようとしている。
その実感が、じわりと胸に広がってきた。
嬉しいのか、怖いのか、自分でもまだ分からない。
ただ、これまでとは違う何かが、確かに動き始めていた。
土曜日まで、あと三日。
玲依は、その数字を、指折り数えている自分に気づいた。
そんなこと、今までしたことがなかったのに。
画面に浮かんでいたのは、たった三文字だった。
「いいよ」
拍子抜けするほど、あっさりとした言葉だった。
玲依は、その短さに、一瞬安堵しかけた。
けれど、すぐに引っかかりを覚えた。
送信してから、まだ一分と経っていなかった。
三年間、こんなに早く既読がついたことなど、一度もなかった気がする。
いつもなら、数十分、時には数時間。
こちらが痺れを切らしかけた頃に、ようやく返ってくる。
それが当たり前の距離感だった。
なのに今夜は、まるでスマホを握りしめて待っていたかのような速さだった。
――
素っ気ない三文字を返すのに、これほど間を置かずに反応する必要が、どこにあるだろう。
まるで、返事を考えるよりも先に、指が動いてしまったかのような速さだった。
――
玲依は、画面を見つめたまま、静かに考える。
言葉は、抑えられている。
けれど、反応速度だけが、その抑制からこぼれ落ちている。
聡明であることは、時に厄介だった。
見なくていいものまで、見えてしまう。
気づかなくていいことにまで、気づいてしまう。
凛は今、画面の向こうで、どんな顔をしているのだろう。
想像しかけて、玲依はその先を止めた。
想像すれば、また新しい感情が生まれてしまう気がした。
――
「いつがいい?」
事務的な文面が、続けて届く。
「土曜の夜」
そう返すと、また間を置かずに返信が来た。
「了解」
「どこ行く?」
短いやり取りが、テンポよく続いていく。
行き先を決める、ただそれだけのやり取りのはずなのに、その端々に、どこか浮ついた気配が滲んでいる気がした。
普段の凛なら、もう少し気だるげな返し方をする。
なのに今夜は、まるで即答を用意していたかのように、返信が続く。
その温度差に、玲依はまた小さく心を掻き乱された。
――
行き先と時間を決め終え、玲依はスマホを膝の上に置いた。
窓の外、遠くの街灯が滲んで見える。
三年間、一度も踏み込まなかった領域に、初めて足を踏み入れようとしている。
その実感が、じわりと胸に広がってきた。
嬉しいのか、怖いのか、自分でもまだ分からない。
ただ、これまでとは違う何かが、確かに動き始めていた。
土曜日まで、あと三日。
玲依は、その数字を、指折り数えている自分に気づいた。
そんなこと、今までしたことがなかったのに。