そこにあったはずの愛
第六十六話 行き先を、探して
三日。
凛からの返信が途絶えて、三日が経っていた。
玲依は、スマホの画面を何度も開いた。
既読はつかず、着信も繋がらなかった。
送ったメッセージが、どんどん積み重なっていく。
『大丈夫?』
『心配してる』
『連絡ください』
どれにも、返事はなかった。
――
四日目の夜、玲依は椅子から立ち上がった。
これ以上、待っていられなかった。
会いに行こう。
そう決めた瞬間、玲依は、ふと動きを止めた。
凛の住所を、知らない。
その事実に、あらためて気づかされた。
三年間、体だけの関係だった頃も、恋人になってからも、会う場所は、いつも玲依のマンションだった。
凛が自分の生活について多くを語ることはなく、玲依も、それを深く尋ねたことはなかった。
自分が良いマンションに住んでいるから。
ただそれだけの理由で、会う場所は、いつも玲依の方に決まっていた。
その習慣が、今、こんな形で玲依を追い詰めていた。
――
手がかりは、一つしかなかった。
凛のバイト先。
あのカフェだけが、玲依が知る、凛の生活の唯一の接点だった。
夜、閉店間際のカフェに、玲依は駆け込んだ。
「すみません、赤羽くんは」
息を切らしながら、玲依は、カウンターにいた店長に、そう尋ねた。
店長は、少し驚いた様子で、玲依を見た。
「赤羽なら、しばらく休むって、連絡があって」
「いつからですか」
「四日くらい前かな」
その答えに、玲依の心臓が重く沈んだ。
――
「連絡先、住所とか、分かりますか」
玲依は、そう切り出した。
店長の表情が、途端に曇った。
「いや、それは……お客さんに、教えられることじゃないので」
玲依は、店長を、まっすぐに見た。
「彼の、恋人なんです」
はっきりと、そう言い切った。
その一言に、店長は、少し目を見開いた。
「そう、なんですね」
戸惑いながらも、店長は小さく頷いた。
「お願いします」
深く、頭を下げる。
その姿勢を、玲依は、しばらく崩さなかった。
店長は、困ったように、視線を泳がせていた。
けれど、やがて、小さく息を吐いた。
「……実は、俺も、最近の赤羽の様子、気になってたんだよね」
店長は、そう呟いた。
「顔色、悪かったし。何か、抱えてそうだったし」
その言葉に、玲依は顔を上げた。
「本当は、こういうの、良くないんだけど」
店長は、そう前置きしながら、レジ奥のシフト表をめくった。
「連絡先の住所、控えがある。ちょっと待ってて」
やがて、店長が、一枚のメモを差し出した。
そこに、住所が書かれていた。
「無理は、させないでね」
店長が、最後に、そう付け加えた。
玲依は、その言葉に、小さく頷いた。
けれど、返事はしなかった。
メモを、強く握りしめる。
――
店を出て、夜の街を、玲依は一人、歩き出した。
行かなければならない。
そのことだけが、今の玲依にとって、唯一、確かなことだった。
三日。
凛からの返信が途絶えて、三日が経っていた。
玲依は、スマホの画面を何度も開いた。
既読はつかず、着信も繋がらなかった。
送ったメッセージが、どんどん積み重なっていく。
『大丈夫?』
『心配してる』
『連絡ください』
どれにも、返事はなかった。
――
四日目の夜、玲依は椅子から立ち上がった。
これ以上、待っていられなかった。
会いに行こう。
そう決めた瞬間、玲依は、ふと動きを止めた。
凛の住所を、知らない。
その事実に、あらためて気づかされた。
三年間、体だけの関係だった頃も、恋人になってからも、会う場所は、いつも玲依のマンションだった。
凛が自分の生活について多くを語ることはなく、玲依も、それを深く尋ねたことはなかった。
自分が良いマンションに住んでいるから。
ただそれだけの理由で、会う場所は、いつも玲依の方に決まっていた。
その習慣が、今、こんな形で玲依を追い詰めていた。
――
手がかりは、一つしかなかった。
凛のバイト先。
あのカフェだけが、玲依が知る、凛の生活の唯一の接点だった。
夜、閉店間際のカフェに、玲依は駆け込んだ。
「すみません、赤羽くんは」
息を切らしながら、玲依は、カウンターにいた店長に、そう尋ねた。
店長は、少し驚いた様子で、玲依を見た。
「赤羽なら、しばらく休むって、連絡があって」
「いつからですか」
「四日くらい前かな」
その答えに、玲依の心臓が重く沈んだ。
――
「連絡先、住所とか、分かりますか」
玲依は、そう切り出した。
店長の表情が、途端に曇った。
「いや、それは……お客さんに、教えられることじゃないので」
玲依は、店長を、まっすぐに見た。
「彼の、恋人なんです」
はっきりと、そう言い切った。
その一言に、店長は、少し目を見開いた。
「そう、なんですね」
戸惑いながらも、店長は小さく頷いた。
「お願いします」
深く、頭を下げる。
その姿勢を、玲依は、しばらく崩さなかった。
店長は、困ったように、視線を泳がせていた。
けれど、やがて、小さく息を吐いた。
「……実は、俺も、最近の赤羽の様子、気になってたんだよね」
店長は、そう呟いた。
「顔色、悪かったし。何か、抱えてそうだったし」
その言葉に、玲依は顔を上げた。
「本当は、こういうの、良くないんだけど」
店長は、そう前置きしながら、レジ奥のシフト表をめくった。
「連絡先の住所、控えがある。ちょっと待ってて」
やがて、店長が、一枚のメモを差し出した。
そこに、住所が書かれていた。
「無理は、させないでね」
店長が、最後に、そう付け加えた。
玲依は、その言葉に、小さく頷いた。
けれど、返事はしなかった。
メモを、強く握りしめる。
――
店を出て、夜の街を、玲依は一人、歩き出した。
行かなければならない。
そのことだけが、今の玲依にとって、唯一、確かなことだった。