そこにあったはずの愛
第六十八話 見つけた欠片
夜、玲依は彩奈に電話をかけた。
指先が震えていた。
「……彩奈、ごめん、こんな時間に」
「玲依? どうしたの」
彩奈の声は、すぐに心配そうな色を帯びた。
玲依は、これまでの経緯を、途切れ途切れに話した。
凛と連絡が取れなくなったこと。
住んでいた場所すら、姿を消していたこと。
手がかりが何もないこと。
話しながら、玲依は、自分の声が情けないほど震えていることに気づいていた。
これまで、誰かに、こんなふうに助けを求めたことなど、一度もなかった。
「今すぐ、行くから」
彩奈は、それだけ言うと電話を切った。
――
三十分もしないうちに、彩奈が玲依の部屋にやってきた。
パソコンを抱えていた。
「探そう」
多くを問い詰めることなく、彩奈は、そう言った。
その迷いのなさに、玲依は救われる思いがした。
彩奈は、ソファに座り、パソコンを開いた。
「凛くんのSNS、知ってる?」
「アカウントは知ってる。けど、あまり見たことなくて」
彩奈は頷きながら、検索を始めた。
すぐに、凛のアカウントが見つかった。
「古い投稿から、遡ってみよう。位置情報、残ってるかもしれない」
彩奈は、そう言いながら、画面をスクロールしていく。
玲依は、その画面を隣で、じっと見つめていた。
過去に遡るにつれ、見覚えのない写真が、次々と現れた。
大学の課題らしき絵画。
友人らしき人物との、他愛のない一枚。
まだ玲依と出会う前の、凛の日常が、そこにあった。
その一つ一つに、玲依は言葉を失った。
自分が知っている凛は、この三年間の、ほんの一部でしかなかったのだと、あらためて思い知らされた。
――
「あった」
彩奈の声に、玲依は我に返った。
画面には、緑豊かな田舎の風景が写っていた。
古い平屋の一軒家。
庭先に、小さな花壇。
写真の隅に、位置情報のタグが残っていた。
「これ、いつの投稿?」
玲依が、そう聞くと、彩奈は投稿日を確認した。
「もう、三年以上前だね」
玲依と出会う前だった。
写真に添えられた、短いキャプションが目に入った。
『ばあちゃんの家、久しぶり』
祖母の家。
そこに、初めて辿り着いた気がした。
玲依は、位置情報を地図アプリで開いた。
東京から少し離れた、郊外の町の名前が表示された。
「ここ、なら」
玲依の声が、微かに震えた。
これまで、凛について、あまりにも知らないことが多すぎた。
その事実は、今、玲依の胸に鋭く突き刺さっていた。
けれど、今は、それに立ち止まっている場合ではなかった。
――
「行こう」
彩奈が、玲依の肩に、そっと手を置いた。
「私も、一緒に行くから」
「ううん」
玲依は首を振った。
「一人で、行きたい」
彩奈は少しの間、玲依を見つめた後、小さく頷いた。
「分かった。けど、無理はしないでね」
「うん」
玲依は、そう答えながら、地図アプリの画面を強く見つめていた。
ようやく、行き先が見えた。
けれど、辿り着いた先で何が待っているのか、玲依には、まだ分からなかった。
それでも、行かなければならなかった。
その想いだけが、今、玲依を突き動かしていた。
夜、玲依は彩奈に電話をかけた。
指先が震えていた。
「……彩奈、ごめん、こんな時間に」
「玲依? どうしたの」
彩奈の声は、すぐに心配そうな色を帯びた。
玲依は、これまでの経緯を、途切れ途切れに話した。
凛と連絡が取れなくなったこと。
住んでいた場所すら、姿を消していたこと。
手がかりが何もないこと。
話しながら、玲依は、自分の声が情けないほど震えていることに気づいていた。
これまで、誰かに、こんなふうに助けを求めたことなど、一度もなかった。
「今すぐ、行くから」
彩奈は、それだけ言うと電話を切った。
――
三十分もしないうちに、彩奈が玲依の部屋にやってきた。
パソコンを抱えていた。
「探そう」
多くを問い詰めることなく、彩奈は、そう言った。
その迷いのなさに、玲依は救われる思いがした。
彩奈は、ソファに座り、パソコンを開いた。
「凛くんのSNS、知ってる?」
「アカウントは知ってる。けど、あまり見たことなくて」
彩奈は頷きながら、検索を始めた。
すぐに、凛のアカウントが見つかった。
「古い投稿から、遡ってみよう。位置情報、残ってるかもしれない」
彩奈は、そう言いながら、画面をスクロールしていく。
玲依は、その画面を隣で、じっと見つめていた。
過去に遡るにつれ、見覚えのない写真が、次々と現れた。
大学の課題らしき絵画。
友人らしき人物との、他愛のない一枚。
まだ玲依と出会う前の、凛の日常が、そこにあった。
その一つ一つに、玲依は言葉を失った。
自分が知っている凛は、この三年間の、ほんの一部でしかなかったのだと、あらためて思い知らされた。
――
「あった」
彩奈の声に、玲依は我に返った。
画面には、緑豊かな田舎の風景が写っていた。
古い平屋の一軒家。
庭先に、小さな花壇。
写真の隅に、位置情報のタグが残っていた。
「これ、いつの投稿?」
玲依が、そう聞くと、彩奈は投稿日を確認した。
「もう、三年以上前だね」
玲依と出会う前だった。
写真に添えられた、短いキャプションが目に入った。
『ばあちゃんの家、久しぶり』
祖母の家。
そこに、初めて辿り着いた気がした。
玲依は、位置情報を地図アプリで開いた。
東京から少し離れた、郊外の町の名前が表示された。
「ここ、なら」
玲依の声が、微かに震えた。
これまで、凛について、あまりにも知らないことが多すぎた。
その事実は、今、玲依の胸に鋭く突き刺さっていた。
けれど、今は、それに立ち止まっている場合ではなかった。
――
「行こう」
彩奈が、玲依の肩に、そっと手を置いた。
「私も、一緒に行くから」
「ううん」
玲依は首を振った。
「一人で、行きたい」
彩奈は少しの間、玲依を見つめた後、小さく頷いた。
「分かった。けど、無理はしないでね」
「うん」
玲依は、そう答えながら、地図アプリの画面を強く見つめていた。
ようやく、行き先が見えた。
けれど、辿り着いた先で何が待っているのか、玲依には、まだ分からなかった。
それでも、行かなければならなかった。
その想いだけが、今、玲依を突き動かしていた。