そこにあったはずの愛
第七十五話 最初から、ずっと
玲依のマンションに戻ってきた。
何度も訪れたはずの部屋だった。
けれど、今夜は、その見慣れた景色が、これまでとは違う意味を持って、凛の目に映っていた。
ソファに、玲依と並んで座る。
祖母の家で、玲依は、すべてを話してくれた。
出会った日の一目惚れ。
荒れていた生活。
あの条件を出した、本当の理由。
けれど、自分は、まだ何も返せていない。
凛は、そのことに、あらためて気づいていた。
「玲依さん」
「うん」
「俺も、話したいこと、ある」
玲依が、静かに頷いた。
促すような、優しい視線だった。
「最初に会った日のこと」
凛は、言葉を慎重に選びながら、話し始めた。
「あのカフェで、玲依さんを見た瞬間」
「一目で、目、離せなくなった」
玲依が、少し目を見開いた。
「本当に?」
「うん」
凛は頷いた。
「綺麗すぎて、住む世界が、違う人だって、すぐ分かった」
「だから、怖かった」
「好きだって、思われたくなかった。断られるのが、怖くて」
「だから、あえて、軽い自分を演じた」
「金づる、みたいな、そんな、打算だけの人間のふりをした」
「本当は、最初から、玲依さんに、惹かれてた」
「だから、玲依さんの条件は、嬉しかったんだよ」
その告白に、玲依は、じっと耳を傾けていた。
驚いた様子はなかった。
けれど、その目には、確かな熱が宿っていた。
「体だけの関係、って、割り切ってたはずなのに」
凛は続けた。
「本当は、ずっと、玲依さんだけを想ってた」
「誤解されるのが、怖かった。重いって、思われるのも、嫌だった」
「だから、ずっと、言えなかった」
「三年間、ずっと」
言葉が、そこで一度、途切れた。
凛は、玲依の目を、まっすぐに見つめた。
「最初から、ずっと、好きだった」
その一言を、ようやく口にできた。
静かな部屋に、その言葉が確かに響いた。
――
玲依は、しばらく何も言わなかった。
けれど、その表情には、抑えきれない感情が静かに滲んでいた。
「知ってた」
やがて、玲依が、そう呟いた。
「なんとなく、だけど」
「本当?」
「うん」
玲依は、小さく笑った。
「言葉にしてくれて、嬉しい」
その笑顔に、凛の胸が、じんと熱くなった。
これまで三年間、抱えてきた秘密の最後の一つが、今、ようやく解き放たれた。
玲依が、そっと手を伸ばした。
凛の頬に触れる。
「私も」
玲依が、静かに言った。
「最初から、ずっと、あなただった」
その言葉に、凛は、堪えきれず、玲依を強く抱きしめた。
二人の間に、もう、隠すことは、何一つ残っていなかった。
――
窓の外、夜が静かに深まっていく。
その静けさの中で、二人は、これまでのどんな瞬間よりも、確かな絆で結ばれていた。
玲依のマンションに戻ってきた。
何度も訪れたはずの部屋だった。
けれど、今夜は、その見慣れた景色が、これまでとは違う意味を持って、凛の目に映っていた。
ソファに、玲依と並んで座る。
祖母の家で、玲依は、すべてを話してくれた。
出会った日の一目惚れ。
荒れていた生活。
あの条件を出した、本当の理由。
けれど、自分は、まだ何も返せていない。
凛は、そのことに、あらためて気づいていた。
「玲依さん」
「うん」
「俺も、話したいこと、ある」
玲依が、静かに頷いた。
促すような、優しい視線だった。
「最初に会った日のこと」
凛は、言葉を慎重に選びながら、話し始めた。
「あのカフェで、玲依さんを見た瞬間」
「一目で、目、離せなくなった」
玲依が、少し目を見開いた。
「本当に?」
「うん」
凛は頷いた。
「綺麗すぎて、住む世界が、違う人だって、すぐ分かった」
「だから、怖かった」
「好きだって、思われたくなかった。断られるのが、怖くて」
「だから、あえて、軽い自分を演じた」
「金づる、みたいな、そんな、打算だけの人間のふりをした」
「本当は、最初から、玲依さんに、惹かれてた」
「だから、玲依さんの条件は、嬉しかったんだよ」
その告白に、玲依は、じっと耳を傾けていた。
驚いた様子はなかった。
けれど、その目には、確かな熱が宿っていた。
「体だけの関係、って、割り切ってたはずなのに」
凛は続けた。
「本当は、ずっと、玲依さんだけを想ってた」
「誤解されるのが、怖かった。重いって、思われるのも、嫌だった」
「だから、ずっと、言えなかった」
「三年間、ずっと」
言葉が、そこで一度、途切れた。
凛は、玲依の目を、まっすぐに見つめた。
「最初から、ずっと、好きだった」
その一言を、ようやく口にできた。
静かな部屋に、その言葉が確かに響いた。
――
玲依は、しばらく何も言わなかった。
けれど、その表情には、抑えきれない感情が静かに滲んでいた。
「知ってた」
やがて、玲依が、そう呟いた。
「なんとなく、だけど」
「本当?」
「うん」
玲依は、小さく笑った。
「言葉にしてくれて、嬉しい」
その笑顔に、凛の胸が、じんと熱くなった。
これまで三年間、抱えてきた秘密の最後の一つが、今、ようやく解き放たれた。
玲依が、そっと手を伸ばした。
凛の頬に触れる。
「私も」
玲依が、静かに言った。
「最初から、ずっと、あなただった」
その言葉に、凛は、堪えきれず、玲依を強く抱きしめた。
二人の間に、もう、隠すことは、何一つ残っていなかった。
――
窓の外、夜が静かに深まっていく。
その静けさの中で、二人は、これまでのどんな瞬間よりも、確かな絆で結ばれていた。