攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
 このままでは、火事場の馬鹿力を見せつける幼馴染によって、あっという間に魔王は討伐されてしまうだろう。

 ――こう言う時は、先手必勝に限るよね!

 私は自ら身を乗り出して、魔王の身体に触れる。
 こうして、彼の異能を奪いにかかった。

『ああ、我が愛しの花嫁……! 貴様から私に触れてくれるとは……!』

 阿玉セクシーの声は、他者を魅了する効果があるようだ。
 聞いているだけで、幸せな気持ちに包まれる。
 いつまでも魔王と、一緒にいたい――。

 身体の奥底から湧き上がる気持ちを必死に否定し、私は彼の異能を己の身体へ吸収する。

「う……っ」

 さすがは、魔王だ。
 どうやら、一筋縄ではいかないらしい。
 これまでの異能は一瞬で奪い取れたのに、時間がかかっている。

 ――胸が、苦しい。

 全身が、引き裂かれてしまうんじゃないかと思うほどに悲鳴を上げている。

「う、ぅ……っ!」

 その苦しみはやがて、視力が失われたはずの左目にまで影響し始めた。
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