攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
「どうして、あんな無茶をしたんだ!?」

 フェドクスにとっては魔王討伐の証拠となる漆黒の魔石を回収するよりも、私の無事を確認するほうが大事だったらしい。

 ものすごい剣幕で怒鳴りつけられてしまった。

 ――そんなに、心配することはないのにね。

 彼の表情を確認するために顔を上げた直後、私は驚きを隠せない。
 なぜならば、幼馴染は――。
 紫色の瞳から、静かに涙を流していたからだ。

「エミリエに、何かあったら……! 俺は、生きていけない……!」
「もう。みんな、無事だったんだから……」
「終わりよければすべてなしなんて、言える状況か!? 吐血したんだぞ!? あんなにも、苦しんで……!」

 フェドクスがこうして取り乱すのは、初めてのことではない。
 ハルル村の悲劇から奇跡的に生還し、何度も命の危機を乗り越えてきた。
 彼は私が傷つく度に、「両親のように死んでしまったらどうしよう」と怯え、情緒不安定になってしまうのだ。

「だ、大丈夫だから……。ね……?」

 こう言う時は、彼が落ち着くまで優しい言葉をかけ続けるに限る。
 私は大きな子どもをあやすかのように、必死に言葉を尽くした。
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