攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
 ――疲れるなぁ……。

 この場に集まってくれた人々が不公平だと騒ぎ出さないように、みんなで協力して四方八方へと微笑みを称えて左右に手を振り続ける。

 普段通りの無表情を貫いているのは、フェドクスくらいなものだ。

 一瞬すらも気の抜けない状態でもボロを出さずに涼しい顔で笑顔を振りまく殿下って、実はすごい人なのかもしれない……。

 思わずルドルフに尊敬の眼差しを向けた直後、後方から殺気のような恐ろしい気配を感じた。
 慌てそちらへ視線を移すと、ナイフがこちらに向かって飛んでくるのが見えた。

「エミリエ!」

 辺境伯は懐から護身用のショットガンを取り出し、目にも止まらぬ早業で引き金を引く。

 ――パァン!

 勢いよく銃口から放たれた弾丸がナイフを弾き飛ばすのと、私を支えていたフェドクスが己の身につけていたマントを翻し、全身をすっぽりと覆い隠されるのはほぼ同時だった。

「きゃああ!」

 先ほどまで女性たちの声援に応えていたガザンが戦闘態勢に入ったのは、国民達に異常事態を知らせるのに充分すぎるほどの効果を発揮する。
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