攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
「君は彼女に命じられたら、なんでもするんだね」
「俺にも、従えないことはある」
「へぇ? 例えば、どんな?」
「傷を肩代わりされた程度で、エミリエに対する嫌悪を好意に変化させた貴様を慰めるなど……。俺には、無理だ」

 フェドクスは腰元の剣を引き抜き、僕の首筋へと切っ先を突きつけてきた。

 ――ここが王宮であれば、今頃彼は王立騎士団によって拘束されているだろう。

 フェドクスは、僕たちの中で一番身分が低い。
 本来ならば、こうして面と向かって話し合えるような人間ではなかった。

「からかっているだけなら、今すぐに止めろ。不快だ」
「嫌だなぁ。僕は、本気でエミリエが好きになってしまったんだ。君だって、わかるだろう? 愛している子ほど、いじめたくなる。そんな男性の気持ちが……」

 ここで「立場を弁えろ」と怒鳴りつけなかったのは、そんなことをしたところで無意味だとわかっていたからだ。

 ――こんなことになると事前に未来視で把握できていれば、彼女を精神的に追い詰めようなんて思わなかったのにな……。

 いい大人が、なんてザマだ。
 今更反省したところで無意味だと知っていても、意気消沈するのを止められなかった。
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