攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
 それがありがたいと思うと同時に、うっとおしくもある。

 ――聖職者から異能を奪っておいて、本当によかった。

 私は黄金の蝶を呼び出し、殿下とフェドクスに幻惑魔法をかける。
 こうして、彼の胸元で大人しくしていると信じ込ませた。

 ――これで数分間は、自由に動ける。
 あとは――。
 幻惑魔法にかかっていないガザンの元へ、急ぐだけ。

「何しにきた! 無能! 危ねぇから、すっ込んでろ!」

 彼は駄目になった腕の痛みを堪えながら、青白い顔で武器を手にしていた。
 いつもよりも怒鳴り声に、迫力がない。

 利き腕ではないせいか、射撃の腕も随分と落ちているように見える。
 どれほど仲間たちのサポートを受けたところで、長期戦意識を繋ぎ止めて戦い続けるのは明らかに無理があった。

 ――彼の腕を先に治すか、魔物から能力を奪うのが先か――。

 どちらにするかなど、迷っている暇は今の自分にない。
 私はあえて、真正面からサキュバスの元へ歩み出た。
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