転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
「どうして、私に話すの」
「お前の目に、諦めない意志があるからだ」
「……それ、褒めてるつもり?」
「違うな。俺はあの日まで、聖女という都合のいい器として見ていた。だが今は違う」
ジークの言葉は明確で、遠回しの感情表現ではない。
だが、それがかえって理央の胸を刺す。
「ありがとう、って言っておくわ。ちなみに、私の本当の名前も『理央』。そういうのも関係あるのかな。相性みたいな感じで」
後ろで控えていたルキウスが、静かに近づいてきた。
「ジーク、予定の時間です」
ジークは理央の言葉には何も返さず静かに席を立った。
「君の中に、元の少女の記憶はあるのか」
その問いに、理央は一瞬、戸惑ったが、はっきりと答えた。
「いいえ」
ジークはというと、小さく首肯した後、騎士の礼をとり、静かに扉を閉じた。
残された理央は古びた冊子の頁を捲る。
祈祷記録の片隅、幼い文字の一文が目にとまった。
『今日も、おはなししてくれた。ジークさん』
その文字に指を這わせ、理央はそっと目を閉じた。