転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

「……元気そうで何よりだな、聖女殿」

 現れたのはジークだった。
 いつも通りの冷たい顔――だが、口元がかすかに緩んで見えるのは気のせいだろうか。

「あのさ、監視って言うなら、もう少し丁寧にしてくれない。なんで待機室に籠ってるの。聖女の部屋はこっちなんですけど」

 理央は重たい扉を親指で示す。

「叫び声が外まで響いたぞ。それに……よく開けられたな、その分厚い扉を」

「暇すぎて鍛えてるのよ。分厚い神学書をダンベル代わりにね。……で、わざわざ何しに来たの?」

 ジークは薄く笑みを刻む。

「奇声の発生源を確かめに来ただけだ。監視役として当然だろう? まさか、こんなにわかりやすく脱走計画が進んでいたとはな」

「ほんっとに! あなたって一言多い!」

 理央は頬をふくらませ、子どものように抗議する。
 だが、ジークはあっさりと背を向けた。

「せいぜい筋肉でも鍛えながら、計画を練り直すんだな。塔の外は、まだお預けだ」

「いつか絶対、あんたより出世して上司になってやるんだからね!」

 背中に飛んでくる理央の捨て台詞に、ジークは声を出さず小さく笑う。

 ――彼女は、まだ諦めることを知らない。

 アスランは二人を見比べ、目を細めて呟いた。

「……こういうの、世間では『微笑ましい』って言うんですよね?」

「違うの、これは完全なる労使の対立構造!」

 ぷいと顔をそむけた理央の頬は、わずかに赤みを帯びていた。

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