転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!


 一方、王宮では、ジークとルキウスが揃って報告書を手に、国王の執務室を訪れていた。
 部屋の窓からは秋の柔らかな陽ざしが差し込んでいたが、ジークの眉間は曇ったままだった。

「……真実であるか」

 眼差しに宿る叡智は、齢を重ねて深いものとなっている。
 王の短い言葉に、ジークは静かに膝をおる。

「塔に詰めている者達は、全員同様の証言をしております」

 報告書の最後には、ひとりの神官がこっそり添えた一文があった。

 『あの空間は、聖堂よりもずっと神秘的でした』

「本人の意図に寄らぬ、奇跡と神秘か」

 王は椅子から立ち上がり、窓辺に向かって深く息をついた。

「神の力とは本来、制御できるものではない。だがこの国の秩序は、それを『制御された信仰』として保ち、偽ってきた」

 ルキウスが眼鏡越しに鋭さを浮かばせ、声を潜ませる。

「教会側も、これ以上秘匿し続けるのは難しくなっているかと思われます」

「制御不能な存在だと思うか、あの子(・・・)は」

 王がふり返らぬまま、声を落とす。
 ジークはその場に控えたまま一瞬躊躇し、かぶりを振った。

「個人的所感を申し上げますと、対話する事は可能かと……彼女もまた、悪人ではありません」

 心を閉ざしたリオという少女の器に入った、『理央』という異界の女性。
 彼女を信頼するという宣言は、近衛騎士という彼の立場では到底許されない私情だ。
 だが、最早、彼女がただのお飾りの偶像でないこともジークにはわかっていた。

 その力が、世界を変える兆しなのか。
 それとも、破壊をもたらす導火線なのか。

 まだ、その答えは出なかったけれども。

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