転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

25 塔に射す光と牙

 塔の回廊に、革靴の硬質な音が響く。

「……聖女殿は予想以上に顔色が悪いな」

 部屋に入ったばかりのジークが、理央をひと目見て眉をひそめた。

「そう? 少なくとも、私を軟禁してる監視役に心配される筋合いはないわ」

 理央は椅子に座ったまま、机上にうず高く積まれた書物を睨みつけていた。

「護衛に来たつもりだったんだが?」

「あのね……扉の外に並んでる中隊規模の近衛騎士は、何? 護衛にしちゃあ随分と物々しいわね。あんたの手下でしょ。制服同じだもの」

「民の不満を沈めるのも護衛のうちだ。聖女殿が民に期待されてる証拠でもある」

「その割には、私の意思を完全に無視して無き者として扱っているような気がするんだけど。一応、これでも人権のある人間なんだけど!?」

 ぴたり、とジークの足音が止まった。
 理央は静かに立ち上がり、背の高い自称護衛騎士を見上げる。
 彼女のまなざしは、諦観では無く、怒りを宿していた。

「おかげで、私の『脱出計画』が無駄になったじゃない」

「本当に……ぶれないな」

 ジークは思わず感嘆のため息を落とす。
 瞳の中の火は埋火などといった可愛げのあるものではなく、紅蓮の炎だ。
 聖女の慈愛からは程遠い。

「ということで、無駄にした責任を取ってあなたが直接采配してよね。ルキウスもレオも全く見かけないし、アスランまで遠ざけちゃって。フロアがむさ苦しい男ばっかりよ」

「直接、采配、とは」

「脱出計画に決まってるでしょ」

 可憐な容姿にまるで相対するかのような、腰に手を当てふんぞりかえる姿は、彼の生家で暮らしている気位の高い猫の様だった。

「ちなみに、どういう計画か聞いても?」

「いいわよ、座って」
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