転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!


 月光が薄く差し込む石畳の路地を、ジークはひた走った。
 刺客の姿は既に見えなかったが、気配はまだ残っている。
 獣のような本能が、確かに奴の逃げ道を感じ取っていた。

「ルキウス、報せろ。犯人は教会構内の構造を熟知している。……内部者だ」

 腰の銀剣に手を添えながら、ジークは細道を折れる。
 その先に、黒い影が跳ねた。

「逃がすか」

 ジークが疾駆する。
 一方、塔の階下では、副官ルキウスが的確に動いていた。

「隊を二手に。門と地下通路を押さえろ。侍女達の居室は控えろ、無駄な騒ぎを起こすな。レオ、南へ回り込め」

「了解!」

 レオが、気配をたよりに駆け出す。
 聖教会の夜は日中よりもずっと静かだ。
 だがこの沈黙の裏で、確かに何かが蠢いている――それを、彼らは知っていた。

 踏み荒らされた花壇の奥に続く密度の濃い森。
 ぽこっと地面が掘り起こされ広がる僅かな空間で、ジークはついにその姿を捉えた。
 漆黒フードの奥に光る双眸、すらりとした体躯。

「……元修道騎士か。もしくは」

「語る名などない」

 刺客は短剣を構え、闇の中で沈み込む。
 ジークも剣を抜いた。

「……無論、名乗る必要はない。お前の背後を割れば十分だ」

 刃と刃が交錯する。
 金属音とともに、火花が月光の中に散った。
 十数合の後、ジークはわずかに相手の足をとらえた。

「くっ……!」

 刺客は苦しげに息を吐き、後方へ跳ぶ。
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