転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

26 聖なる裁きという欺き

「痛てぇ」

「貴方のそのうっかりとした口はどうすれば、妄言を紡がなくなるんですかねえ」

「妄言って、周知の事実じゃ――むぐっ」

 なぜか解毒薬を口の中に突っ込まれたレオは、思わず涙目になり足を止めた。

「これめちゃくちゃ不味いから嫌いなんですけど~~!」

「はあ……」

 思わずついて出たため息に、ルキウスはそれ以上語らず、ジークの背を追う。

 不測の事態があったとはいえ、警備対象である聖女からこの三人全員が目を離しているという状況は不味い。
 少女が幽閉されている塔に急ぎ戻ると、階下の控え室では、理央の仕込んだ特製レモン水(下剤入り)の被害に遭った部下や神官たちが、青い顔をして床に転がっていた。

 階段を駆け上がると、石造りの壁や床の所々が、一気に荒廃が進んだように亀裂が入っている。
 そして、明らかな『魔力』の残滓。
 しかし、それは気分の悪くなるような類のものでは無く、清冽で神秘的な空気を孕んでいた。

 石段に響く靴音に、踊り場で仁王立ちしていた少女が振り返る。
 月光を背にしたその姿は、ジークの生家にいる気位の高い長毛種の猫のようだった。

「遅かったわね」

「何をした」

「失礼ねそれ。こういう時は『怪我はないか、大丈夫か?』でしょ」

「あ、聖女様、ご無事っすか?」

「レオはお腹大丈夫なの?」

「あ、え? 大丈夫っす。さっきの解毒薬って……」

 レオは首を傾げながらルキウスを伺うが、彼の上官は何も答えず涼しい顔をしたままだ。

「ふうん、あの薬ってそんなに即効性あるのね……ジークも全速力で走れてたし。こっちは全然追いつけないんだもん」

「部屋から出るなと、言ったはずだが」

「だって、脱出予定日だったんだから、出るでしょう普通」

「へっ、逃げるんすか? 今日!?」

「本当は今日の予定だったんだけど、やめたの」
「あ、辞めたんすか」

「……二人の会話を聞いていると、頭が悪くなるような気がしますね」
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