転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
ルキウスの冷たいツッコミと共に、ぐいぐいとジークに肩を押される形で部屋に押し戻され、理央は不満げに口を尖らせた。
室内は先ほどの騒動で多少荒れていたものの、ヒビの入った階段や塔の壁面よりは大したことない。
床に散らばった紙類を理央が適当に集め始めると、三人の騎士達も手近なものから拾い上げる。
「随分、多岐にわたって集まったな」
「私、引きこもりで暇人だから。情報源はほとんどアスランからの差し入れよ。あ、それは宝物だから返して」
古びた革表紙の記録――元のリオが残した手記――は、今は理央のもうひとつの魂とも言える。
何度も繰り返し読み込んだが、ついぞ、かの少女の記憶が蘇ることは無かった。
そもそも、もう彼女の魂はこの器に居ないのかもしれない。
だから、あの時現代で過労死して倒れた自分が、この空いた身体に入り込んでしまったのかもしれない。
それは神に選ばれたとか特別な事ではなく、完全に『タイミング的な問題』のように、理央には思えた。
「で、今日の脱出計画は頓挫したのだろうが、次はいつ決行すると考えているんだ」
どことなく諦め口調で問うジークに、理央は小さく肩を竦めた。
「もうここまできたら私、怖いもの無いし。せっかくだから、その『聖なる裁き』とかいう茶番の処刑イベント? 根底からぶっ壊そうと思ったの。協力してくれない?」
ほえー、とレオの間の抜けた声が部屋に落ちて、ジークは急激に頭が痛くなるような気がした。
「ジークも『親聖女派』なんでしょ?」
小悪魔のように微笑んで首を傾げる少女の様子に、ルキウスはジークにちらりと視線を流す。
「なんすか、親聖女派って」
「派閥でしょ。聖女大好きーっていう人たちの集まりみたいよ」
「なるほど~~!」
「成程、じゃない。私情は挟むなと言ったはずだ」