転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

 ルキウスがピシャリと釘を刺す中、理央は近頃王都で始まり出した演劇の如く、緻密な『告発の脚本』を護衛騎士たちに披露し始めた。

 聖なる裁きの儀式手順は、神聖な儀式を冠しているがゆえに、過去からその手順が大きく変化している事はない。
 古い祭礼録まで引っ張り出して、理央はその手順や、進行役の上級神官の台詞を含めてすべて暗記したのだ。
 幽閉されていて暇だったのもあるが。

「彼らが大仰に私を断罪した直後、私はこう返すのよ。『神の名を騙った罰ですか……。それでは逆に、誰が神の声を捏造していたのか、証拠ごと叩きつけて差し上げましょう』ってね!」

 言いながら、かつての神官達が聖女候補の少女たちにあてて送った『偽の啓示文』の写しを掲げる。

「聖女さま、完全に悪役の顔してるっすよ……」

「悪役の顔っていうか、まあ、敵からすれば完全なる悪なんじゃないの? でも、この胸糞悪いコンプラ違反の記録を見たら、たいていの人は、教会側に忌避感を覚えると思うけど」

 ひらりと、さらなる書類が追加される。
 ジークが黙読し、ルキウスは読み進めていくうちに思わず胸元を抑える。
 最後に読んだレオは「……俺、親聖女派に今なったんで、悪役補佐やってもいいっす。あ……上司の許可が下りれば」と、真顔で言った。

「――よく見つけたな、こんなものを」

「まあ……この塔って別名『幽閉塔』でしょ? こういう都合の悪いゴミが、結構適当に破かれて散らばってるから。重要書類なのに、シュレッダーもない時代に誰にも復元されないと信じ込んでいる。頭お花畑すぎるわよね。情報管理の杜撰さが命取りになるって教えてあげるわ」

 神託の儀による、非道な失敗記録。
 魂の適合率は一割未満。
 繰り返される強制召喚の試行。
 その失敗による『魂の破損』。

 理央とアスランが、荒廃した書庫の紙屑として散らばっていた同筆の紙片を集め、地道なパズル作業で張り合わせて復元した記録には、そのような身の毛もよだつ言葉の断片を拾い上げることが出来た。
 そして、確認できる筆跡の一部には、現在も存命である枢機卿や上級神官の名もある。

「彼らは神の力を都合よく使おうとして、無理やり別の魂を引っ張ってきてたってわけ。それこそ、聖女として啓示を受けたと見せかけ、自分たちの都合の良い器で実験を繰り返した。一つの身体に二つ分の魂をねじ込めば、魔力値のキャパシティが二倍になる。それが異界から引っ張った魂なら、きっと世界の理を捻じ曲げて、あの人たち曰くの奇跡……つまり神の力、が定着するかもしれないっていう、馬鹿馬鹿しすぎる発想の元、罪のない少女たちの命を弄んできた。……これって、絶対に許されることではないでしょう」

 一気に言葉を吐き出した理央は腕を組み、顎を上げ、重たい沈黙に包まれた室内をゆっくりと見回す。
 自分の切り札は見せた。
 ここから先は、どうしても協力者ならぬ『共犯者』が必要なのだ。
 それも特別に腕が立ち、ある程度の身分を有する、最強の騎士たちが――。

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