転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
王城では、秘密裏に王太子と老王フレドリクが面会をしていた。
それも王の寝室で私的に。たとえ血のつながる家族とは云え、王族である彼らの関係性は通常の家族のそれとは異なっている。
深夜に迫るこの時間帯に二人きりというのは、まず珍しい。
側仕えさえも排除し、王は夜着のまま坐していた。
「彼女の口上をお見せしたかったです」
少し憂いを帯びた視線で、フェルディナンは窓の外を眺めている王に告げる。
彼の父親であるこの国の最高位の存在は、何も答えない。
「アリシアの絶望も、理解は出来るが」
暫くして王がそのように切り出した。
「王族の一員が、王家に連なる者に手をかけるなど、有ってはならんだろう」
「それは無論のこと……ですが、あの娘は、この私など知らない――父親とは思わない、と」
「――成程」
王は深く思案するように顎に手をあて、再び押し黙る。
重たい沈黙が場を支配していた。
「王子達は幾つになった」
「上のフェリックスが十で、下のオスカーが八歳です」
「成人にはまだもう少しかかるな。なればこそ、ムールブルク家を失脚させるわけにもいくまい」
「妃が憎いのではありません。すべての咎は、若き日の私に有るかと」
「では、お前が廃嫡されるか」
つまらなそうに落とされた言葉に、フェルディナンは言葉を失う。
父王の腹の内を探るのは、いつだって彼にとって困難を極めている。
「冗談だ。フェリックスもオスカーも、王家に連なる大切な子供だろう。そして――あの娘もまた」
「教会の構成が丸ごと入れ替わるとなると、聖女が着手した改革もまた、立て直しの指標となるかと。私の娘では無いと言う彼女を、我々王家の身内として取り込むのもまた難しい事です」
「正直な……聖女であろうがなかろうが、あまり私個人にとっては重要なことではない。ただ、今回このようにして広くその名と顔が知られてしまったあの娘を、他国の盾や質の切り札として取り込まれるくらいなら、手元に置いておきたいというのが、本音よ」
いかに権威があろうと、感情のまま動けない立場の男たちは、夜の闇に沈むよう溜息を落とす。
「父上、彼女から、聖女として王太子と『業務提携』をして手を組むことは出来るかもしれない、と言われたのです」
「聖女として、手を組むか……」