転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
「それは」
非常に困る。
せっかく祈祷受付が上手く回るようになったところなのだ。
静かに入室してきたエイラがカティスにそっと耳打ちをする。
一瞬だけ、枢機卿は苛立ちを滲ませるような表情を浮かべ「それでは後程」と短く言葉を切って、退室していった。
部屋に残されたジークは、ペンを手に書類に埋もれる理央をじっと観察していた。
「なるほど。初日とはまるで別人のようだな。確かに様子がおかしい」
そう言いながら、ジークはエイラに視線をやった。
ひっつめ髪の女は、主である理央の存在を通り越して、ジークに対し淡々と返事をした。
「先日の、宣託の儀以降、です」
「あの、何なの?」
理央は意味深に頷いたエイラに、そして上から目線で品定めしてくる男の両方に対して疑問を口にする。
「……自分では、判っているのではないか?」
ジークは怜悧に言い放った。
まるで喧嘩を売られているような態度に、理央の闘争心がむくりと起き上がる。
理央はゆるやかに微笑み、立ち上がった。
だが、男の胸のあたりまでしか自分の頭が届いておらず、仕方なしに思いきり男を振り仰ぐ体勢を取らざるを得ない。
「監視、結構。でも私、何も隠すつもりはないけど」
「……へえ」
ジークの目が、僅かに見開かれた。
初日に見た虚ろな人形からは想像もつかない不敵な態度に、微かな興味を惹かれたように。
その瞬間から、二人の奇妙な関係が始まった。