転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
理央は、努めて平静を装いながら答える。
誰が味方なのかも判らないこの状況で、迂闊な言動は許されない。
「もし、貴女様が何かを思い出されているとしたら、聖なる裁きの日を延期せざるを得ないと言ったら?」
カティスは、理央の反応を試すように問いかける。
処刑までのタイムリミットが伸びることに関しては歓迎できるが、延期という言葉から、最終的な結末に関して変化は無さそうだ。
この問いに対する選択肢は、間違えられない気がする。
しかし、誰が味方なのかも判らない。
圧迫面接もかくやの状況にも関わらず、理央はいたって冷静を務める。
静かに問いの内容を精査し、シミュレーションしていく。
「何も、思い出してはいません。わたくしは、私です」
嘘は言っていない。
そもそも最初から自分は原田理央である。
たとえ、今、リオ・アリミヌエという外郭を有していたとしても。
「ほう、そういった意思を持たぬ人形かと思っておりました。私どもの認識違いでしたか」
「そうね。黙って居続けることも、飽きることもあると思うんです。現に飽きてしまいました私。ただ死ぬ日を何もしないで待ち続ける事に。折角だから、最後に何かしたいなって思うのはおかしなこと? 誰にでも権利はあるのでしょう?」
書庫で閲覧したこの世界の処刑の概念は、理央の知る概念と似たり寄ったりであった。
「これで最後になるなら、何かしたいんです。敬愛なる民の為に」
芝居がかって両手を組む姿は、慈悲深い聖女の理想像ともいえよう。