転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
早朝の礼拝堂には、まだ誰の気配もなかった。
高窓から差し込む陽光が、広大な石床に静謐な模様を描いている。
聖女リオ・アリミヌエこと理央は、礼拝堂横に続く倉庫の片隅で、手にした古文書を読み込んでいた。
その横顔を垣間見る限りは、静かに書物を手にしていたかつての姿と変わりないように見える。
しかし瞳に宿る力強さは、以前の彼女が失くしたものだった。
手元には、ここ数日でかき集めた文書が山積みになっている。
教会の財務記録、信者からの寄進金の使用報告、礼拝堂の維持費にかかわる支出明細――そのいずれもが公的な記録とされているにも関わらず、杜撰で、不透明で、恣意的な処理の痕跡が見える。
信仰とは本来、内なる心に根ざすべきものである。
だがこの場所では、信仰は制度の名のもとに搾取と支配の手段と化している。
神の名を借りて。
「形骸化した理想と腐った管理体制、あとは保身のための虚構だけ」
声に出すと、あらためて怒りと呆れが湧き上がった。
とはいえ、理央自身は、この程度の矛盾に慣れている。
むしろ、冷静にそれを把握し、可視化し、対処することを生きがいとしてきたといってもいい。
ただし、彼女がこれから行う事は、すなわち敵を作る行為でもある。
正論を掲げ、既得権益を侵せば、反発は免れない。
けれどそれでも構わない。
そもそもリオ・アリミヌエという存在には、味方など誰一人居なかったのだ。
――処刑執行までは、半年無い。
このまま従順な操り人形を演じていても、未来は訪れない。
理央は、自分に課せられた時間を、この腐敗したシステムを破壊するために使うことを決意した。