転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
表情がある。
主張がある。
行動がある。
命令を待たずに動き、命令に異を唱え、しかもその理屈に破綻がない。
――まるで別人だ。
彼の知るリオという名の少女は、全てを諦観し、ただその日までの生を繋いでいただけの、儚く美しい人形だった。
数ヵ月に一度の面会の機会があったにも関わらず、彼女とまともな会話をしたことなど殆ど無かった。
「なぜ、このタイミングなんだ……」
王家が入手している聖教会の王家に対する背信とも呼べる行為に関する調書は、現在監察官の元で秘密裏にに保管されていた。
ジークは乱暴に前髪をかきあげ、大聖堂の扉を睨みつける。
「よりにもよって、当代聖女に対して、禁忌の術を行うとはな。愚かな」
属性ひとつをとっても、彼女は現王家にとって、確かに不都合な存在なのであろう。成人の儀を行う前に、処刑されることは、既に確定している事項なのだが、万が一……。
ジークの脳裏に、聖女の生き生きとした表情が浮かび、そしてすぐに打ち消される。
彼自身の任務、そして彼にこの密命を依頼した存在の真意が、複雑に絡み合っていた。