転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

7 求む。尊厳の遵守

 古文書庫は、今日も例によって空気が悪い。
 ホコリが舞い、虫が蠢き、天井は高く、薄暗い。

 どこを取っても劣悪な環境だが、理央にとっては少なくともベッドでごろごろ過ごしているよりかマシである。

 資料整理やデータ分析に明け暮れた経験が、この埃っぽい空間でまさか役に立つとは思いもしなかった。

「……矛盾、見ぃーつけた」

 理央は、分厚い文書の山に埋もれながら、勝利の笑みを浮かべた。
 彼女の鋭い目は、財務に関する記述のわずかなズレも見逃さなかった。
 教会の金銭管理に明らかに不自然な空白が存在していたのだ。

 勘定科目は聖女費。
 しかも定期的に同じ名義で、教会外の誰かに流れていることを突き止めた。

「完全に幽霊口座。やってること、もはやマネーロンダリングの域じゃないの」

 理央にとって、聖教会での暮らしはかなり暇で、聖女の主たる仕事といえば日に二度の祈祷くらいだ。

 この国では、聖女は名目だけが先行し、その実は政争の道具に過ぎないのだろう。
 不都合な存在を、神の名のもとに、政治から排除する機構にされていたのかもしれない。

 そう考えると色々と辻褄が合う。
 聖女維持費として、国民から集められた信仰の証である献金が、誰かしらの懐に入っていたとすれば、これはただの横領ではない。詐欺である。

「フォリフォンヌって王制と教会の二元体制構造風かと思ってたんだけど、その間を取り持ついっちょ噛みしている誰かさんが確実に居るってことね」

 納得したように頷く理央の話す内容はひとかけらも理解できていなかったが、セイラは力強くうんうんと相槌を打つ。

「それは、ズルいですね~!」

「精査していて気づいただけど、聖女費以外でも、使途不明金があまりにも多いのよね」
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