転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
少女たちのキャッキャとした会話は、理央にどこか懐かしい気持ちを思い起こさせる。
教会の不正や改革案ばかりを考えていた理央だったが、その可愛らしい会話に思わず耳を傾ける。
「そういえば、教会の侍女って花嫁修業の一環なんでしょう? でも、神官はおじさん多めだし、修行になるの?」
「そこはほら! 基本的な所作や儀礼をお勉強させていただきつつ、出会うんですよ! どなたかに! 教会には様々な方がいらっしゃいますからね。リオ様のおかげで、さっそく近衛の騎士さんにも出会えちゃいましたもん」
「なるほどね? カナンも?」
「わた、わたしは……養護院のベッドが、もう、足りてないので……それに、読み書き、とか……」
唐突に話題を振られたカナンが、もごもごと口ごもる。
「いろいろ、勉強できます……ここにいると。ここにいたいです……」
「そっか……まあ、人生いろいろあるよね。生きてると」
前世では仕事に忙殺され、何年も恋愛事からは遠ざかっていた。
この二人の少女のささやかな未来のためにも、なんとか自分が生き残らなければ。
そもそも、理央が処刑された後、この部屋付き侍女たちはどうなるのだろうか。
トカゲの尻尾切りのように、どのようにも処理できる人選だからこそ、養護院出身のカナンや、これといった家格を持たないセイラが、聖女の部屋付きに選ばれたのかもしれない。
だとしたら、あまりにも人の命を軽んじすぎている。
――んー私、こんなに怒りっぽかったっけ。
自問しながらも、理央はこれから着手すべき『労働環境改革』に本腰を入れようと決意する。
セイラはすでに勢いで巻き込んでいるが、カナンも巻き込むしかないだろう。
理央はセイラから回復薬の小瓶を受け取ると、鼻をつまんで一気に飲み干した。
――どぶ臭く、歯茎が痛むほど、辛い。
しかし、効果は恐ろしいほど即効性があった。
難点は、口の中に後味がずっと最悪な形で残り続けることくらいである。