転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
理央が差し出したのは、教会内の古い記録の写しだった。
かつての聖女への寄付金や献金に関する記録の一部である。
外表紙は焦げていたが、中の記録は十分に読み取れた。
「……これは」
ジークの表情が、初めて険しくなった。
彼の氷蒼の瞳が、羊皮紙の数字を素早く追う。
「収支の計算も曖昧だし、不自然な出費も多いのか」
ジークは無言で記録を捲り続けた。
数字の羅列の中に、明らかに不審な点があることを、彼はすぐに理解した。
教会の腐敗に関してある程度の予測はしていたが、具体的な証拠を得られずにいたのだ。
だが、これは確かな『尻尾』になりうる。
「聖女への献金は年々減少していると報告されていた筈だが、実際の入金記録は膨大だ。これは、完全に……」
ジークの低い声が響く。
彼がこの国の財政にも関わっているのか、あるいは単純に数字に強いのか、理央にはわからなかったが、彼の分析は的確だった。
「誰か、横領しているでしょ」
理央は薄く微笑む。
彼女は、次の手駒――味方となる標的を定めた。
ジークがこの不正調査に深く関わっていくことで、彼自身が王命としての任務と、教会の腐敗との間で板挟みになり、最終的に理央の味方として動かざるを得ない状況を作り出せれば重畳。
教会内部の腐敗は、王室の威信にも関わる問題なのだから。
ジークは理央の言葉には答えない代わりに、無言で書類や書簡が入った重い木箱を抱え上げた。