転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

9 消えた奉納品の行方

「……おい。朝食を残すなと言ったはずだが?」

 低く、しかし有無を言わせぬ声が、理央の耳元で響いた。
 口いっぱいにパンを頬張り、ハムを詰め込もうとしていた理央は、思わず動きを止める。

「見てわかんない? 今、パンを口に詰めてる最中なの!」

 頬袋がリスのように膨らんだまま、理央は口を動かしながら反論した。

「食べると喋るという行為は、両立させてはいけない場面だ。行儀が悪い」

「うるさいわね、食事中に細かいこと言わないで! そもそもこの量、誰向けよ!?  騎士みたいな筋肉馬鹿じゃないんだから!」

 目の前には、焼きたてのパンが山のように積まれ、香ばしい香りを漂わせている。
 隣には山盛りの卵料理、皿からはみ出さんばかりの肉料理、そして山海の幸がふんだんに盛り付けられたサラダ。
 これらはすべて、理央一人のために用意されたものだった。

 というか肉食は禁じられているのではなかったのでは。

 手っ取り早く体力を身に付けたいとは言ったものの、前世の朝食といえば、トースト一枚とコーヒーが精々だった理央にとって、この豪華すぎる食事は、むしろ拷問に近い。

「聖女殿が力を発揮するには体力が必要だと判断した。その身体は、中身の性質より脆弱だろう」

 ジークは、表情一つ変えずに告げる。
 その眼差しは、まるで精密機械を分析するかのようだ。

「褒めてるのか貶してるのかどっちよ、ほんと……」

 理央はうんざりしたように呟いた。
 なんなのこの朝から圧強い騎士サマ……。
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