転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
護衛兼監視役がほぼ常駐するようになって約一週間。
絶賛教会内内引きこもり生活をしている理央だが、乙女の朝食を見張るのはやめて欲しい。
彼は監視役であるにもかかわらず、やたらと理央の行動に口を出す。
時には厳しい言葉で、時には妙に丁寧な口調で。そのたびに理央の神経は逆撫でされ、反論せずにはいられないのだ。
「ところでリオ・アリミヌエ」
「フルネームで呼ぶのやめてって言ってるでしょうが。そんな堅苦しい監査役みたいな呼び方、毎回ムカつくのよ。まるで私が何か不正を働いているかのような響きがあるじゃない」
理央は、いまだ口いっぱいのパンを咀嚼しながら、不満をぶつけた。
「では聖女殿。……いや、やはり問題児のほうが似合いそうだな。爆発聖女殿の行動は予測不能で、常に周囲に混乱をもたらす」
ジークは、一瞬の間を置いてから、心持ち口角を上げた。
その表情は、理央をからかっているかのように見えた。
「今の取り消してよ。即刻、丁寧に詫びなさい。私は問題児なんかじゃない。むしろ、あらゆる問題を解決に導いているのよ! っていうかしれっと爆発聖女ってほんとむかつく」
そう言いつつ理央は立ち上がり、カツカツとヒール音を鳴らして彼に詰め寄った。
反射的に反論する理央の様子にジークは、肩を震わせている。
「またその靴を履いているのか。転倒したらどうする。聖女たるもの、常に優雅であるべきだ」
ジークは、理央の足元を一瞥し、眉をひそめた。
「美意識と気迫は戦場でも通用するの。地味なローブなんかに染まってたまるもんですか。私は私のスタイルを貫くわ。それに、この靴を履くと、なんだか力が湧いてくるのよ。ヒールは武器。布靴なんて、もたもたして気持ち悪いでしょ」
理央は、胸を張って言い切った。
彼女にとって、この異世界でも自分らしさを保つことは、精神的な安定に繋がっていた。
「……全力で異質だな」
ジークは、やや呆れたように呟いた。
「最大級の賛辞と受け取っておくわ! 異質だからこそ、この閉鎖的な教会に新しい風を吹き込めるんじゃないかしら」
理央は、満足げに笑った。そのやり取りを聞いていた侍女たちは、部屋の外で震えていた。
「(……)」
「(また始まった……)」
「(……毎朝のこれ、なんなん、でしょう……)」
部屋付き侍女の三人は、毎日繰り返される理央とジークの言い争いに、すっかり慣れてしまっていた。
最初は恐れおののいていた彼女達も、今では微笑ましい日課として見守っている。