転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
「あのね、距離感が、近いのよ。監視なら壁の花でもしていて」
「俺は花ではない。刃だ」
「……どうりで性格がトゲトゲしてるわけね」
(いちいち例えが物騒なのよ。ハラスメント講習受け直してきなさい)
理央が睨むと、ジークの口元が僅かに持ち上がった。
「だが、聖女殿はその棘すらも躱す。なかなかの胆力だ。王の間にいるような貴族の令嬢たちよりよほど面白い」
「面白いで括るのはやめて。これは戦いなの。命令されるだけの人生じゃないのよ」
「命令に従う人生ってのも、案外戦いでね。……もっとも、その命令を疑い始めてる自分がいる。いや、これは我ながら珍しい」
その一言に、理央は一瞬だけ手を止めた。
けれど、顔には出さず、書類を捲る手を再開する。
「あなたみたいな人が……葛藤するなんて、冗談でしょう。指示を黙って飲み込んで、淡々とこなすだけの冷徹な人だと思っていたわ」
(圧倒的トップダウンに絶対服従する社畜の鑑だと思ってたのに)
「冷徹に見えても、内側では葛藤することがある」
「そう」
理央は呟きながら、机の端に積まれた未処理の書類に手を伸ばす。
けれど、その束を取る寸前、ジークが無言で先にそれを拾い上げた。
「……何してるの」
「手が止まっていた。代わりに運んだだけだ」
「……それ、手伝う気なんて微塵もない言い方」
(手伝う気ゼロならシュレッダー係でもやっててよ! あ、この世界にシュレッダーないけど!)
「当然だ。俺は監視役だ。共犯者にはならん」
そう言いながらも、ジークは静かに書類を差し出す。
理央がそれを受け取ろうとした瞬間、ふと指が触れ合った。
一拍、間が空く。