転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
理央が顔を背け、わざとらしく咳払いする。
「えっと……邪魔しないでくれる?」
「そちらこそ。耳を赤くしておいて、俺のせいにされても困る」
「してないわよっ!」
そのやり取りを、扉の隙間から見つめる影が一つあった。
若い神官――名をアスランという。
金髪碧眼の物腰柔らかな青年で、理央の業務改革を手伝っている数少ない下級神官の一人だ。
彼はそっと呟いた。
「……あの方、本当に聖女様なのか?」
「ええ、私も、ちょっと心の中だけで突っ込んだことあるんですけど……お似合いですよね! 眼福!」
部屋付き侍女のセイラは握りこぶしを作り、胸のあたりでぐっと力を込める。
膨大な記録の束を眺める理央の真剣な眼差し。
そして、その彼女に対して無遠慮に言葉を投げかける近衛騎士の姿。
そのやり取りには、ただの監視と被監視という枠を超えた熱が見える様な気がする。
実に絵になる。
「私、断然聖女派なんで、なんでも協力しますよ!」
やけに鼻息の荒い聖女付き侍女に、アスランは同意しつつも苦笑し、それから真面目な顔をした。
「聖女殿が提案した業務改革案……これは、もっと広めるべきだ。腐った上層に潰される前に、動かねば」
理央のあずかり知らぬところで、こちらでも共同戦線が密やかに張られているようだ。
アスランは自室に戻ると筆を取り、静かに動き始めた。
理央の名を伏せたまま、教会の末端を構成している神官や侍女たちに回すための覚書をしたためる。
その筆致はどこまでも静かで、しかし熱を帯びていた。