転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
足早に回廊を行く壮年の枢機卿は、書類の束を乱雑に抱え、教皇の間へと向かっていた。
重たい金色の扉を開くと、最奥には髪も髭も床まで届くような長さの小柄な老人が、金塊を積み上げながらワインを口に運んでいた。陽はまだ高い時刻だが、分厚いカーテンが下ろされ、濃密な香が纏わりつくように流れて来る。
「おおカティスか。一緒にどうだ」
退廃を極めたような堕落した光景に、カティスと呼ばれた神官は、揉み手で聖教会における最高位に付く人物にすり寄った。
「我が君。シーリィーゼ猊下。それはとてもありがたいお言葉。ですが、リオ・アリミヌエの変化は、単なる器の不安定性では無いように感じます。奴は明確に、こちらの不正を突いてきているのです」
「……なにやらワシの耳にも届いてはおるが、近頃はこうして寄進も増えているから、もう暫くの間は目溢ししておくがよかろう」
「しかも、護衛までもが協力している節がございます。ネズミのようにこそこそと嗅ぎまわっているのです」
「あれはオベールレヒト卿の子息だったか」
国内における大貴族、オーベルレヒト侯爵の嫡男が、護衛の任務に就くなど聞いたことも無い。
しかしかの青年は、今の聖女が今のようにすっかり変貌する前から、定期的に面会に来ていたのは確かだった。
当代聖女の出自が王家、もしくは王室に所縁のある存在である事は、教皇の周知の話。
だが、成人の儀を迎える前に処刑されることは確定している。
王政側から不要となるべく存在を、聖教会が再利用したとしても大して問題はあるまい。