転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
12 懐疑心
その日、ジークは聖堂の裏庭で、一通の報告書を受け取った。
報告書を聖女の監視役に渡したのは、リオ・アリミヌエ付き筆頭侍女のエイラである。
書面を読み切ると、彼は思考を断つように、静かにまぶたを下ろした。
ついに来たか、と静かに息を吐く。
しかし、その内容はジーク自身が薄々感じ取り、観察し、そして確信へと近づきつつあったものだった。
「今の聖女様は、かつてのリオ様ではありません。かつてのリオ様の記憶が無いのです」
エイラは、彼女がこの教会へ幽閉さながら寄越された時から、ずっとその側に居た。
家名も与えられなかった幼い少女。
白磁の頬に秀でた額。緩やかに波打つ髪は絹糸の様。
期待と怯えの浮かんでいた碧い瞳に諦観が宿るのは、聖女の間に押し込められてからほどなくしての事だった。
フォリフォンヌ王国の成人の儀は十八の歳である。
少女がこの教会へとやってきたのは、十になる少し前だった。
エイラは現王からの密命によって、七年近くも側仕えをしていたのだ。
今回の変質が、魂の入れ替わりなのか、精神の変容なのか。真相を明かすには、まだ材料が足りない。
だが、今、聖女の名を名乗る女の目に宿る意志の光は、以前のお人形の少女には無かったものだ。
その変化を肌で感じ取っていた者は、既に少なくない。