転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!


「……また早朝からですか、聖女様」

 アスランが半ば呆れたように肩をすくめた。

 礼拝堂横の倉庫で過去の記録に向かい、熱心にペンを走らせる理央。
 その姿はもはやお飾りの聖女ではなく、現場監督そのものだった。

「だって、昨日の棚卸し分をまだ確認してなかったから」

「確認なんて下の者にやらせればいいでしょう。聖女様の手を煩わせることでは──」

「私がやる方が早いし、文句も少ないの。やったことない人にやらせて二度手間になる方が面倒でしょ?」

(人に仕事を教えるコストと、自分で巻き取って終わらせるコスト。今のフェーズなら圧倒的に後者よ!)

 さらりと返す言葉に、どこか実務職の風格すら漂っていた。

 以前の彼女はどのように生活をしていたか──そんなことを、ふとアスランは思う。
 祈祷の間で、たどたどしく経典を読み上げていた姿が、記憶に残っている。

 だがしかし、今そこにあるのは、確かな意志と自我。

 そして、それを最も鋭敏に感じ取っている男が、理央の背後にいた。

「……聖女殿について、そろそろ報告書に纏めねばならんな」

 低く、しかしよく通る声。
 理央は面倒くさそうに振り返って、ジークの姿を認めると苦虫を嚙みつぶしたような顔をする。

「他にする事ないの?」

「任務なのでな」

「報告って、何を? 『聖女リオ・アリミヌエ、最近やたらに仕事ができる』とか?」

「あるいは『以前とは別人格の可能性』……だな」
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