転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

14 過去の記憶 リオの祈祷記録

 その日、理央はひとりで旧修道院棟の書庫を探索していた。
 正確に言うと、先ほどまでジークは傍にいたのだが、エイラから『王都の騎士団本部より急を要する知らせ』を受け取り、珍しく険しい顔をして席を外したのだ。
 その隙を突いて、理央は大聖堂からこっそり抜け出した。

 今では使われていないその部屋には、かつての聖職者たちが残した文書や備品が埃まみれのまま放置されている。
 崩れ落ちた石壁の隙間から差し込む光は埃の舞いを際立たせ、時間の流れを鈍らせているようだった。

 「このへんの整理も、いつかやらなきゃと思ってたのよね……。誰もやりたがらないし。なんか色々捨ててあるけど。処分するものに困った、いわゆる『負の遺産』の掃き溜めってとこかな」

 誰に言うでもなくつぶやきながら、理央は古い記録書の束や日誌を拾上げては積み直していく。
 その指先が触れるたびに、古紙特有の匂いがふわりと舞った。
 ふと、棚の奥から一冊の手帳のような薄い冊子が、床にぽとりと落ちた。
 その音は、書庫の静寂に吸い込まれるように小さかった。

「……なに、これ?」

 装丁は簡素で、使い込まれた表紙には手書きでこう記されていた。

 ――祈祷記録 リオ――

 理央の手が止まった。
 そのシンプルなタイトルが、なぜか胸の奥をざわつかせた。
 理央はそっと、その冊子を開く。

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