転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
理央は、わずかに間を置いた後、ぽつりと言った。
「陛下のご厚意で護衛の任に付かれている騎士さんに、率直に問うわ。……聖女って、現王家にとっては『不要な存在』でしょ」
ジークの目が、鋭く理央を射抜く。
「私、残念ながら、勘がいいの。王家は、きっと過去の不都合な記録を消したい。だから教会側が裏で何をしているのか本当は知っていて、あえて見逃している。半年後の『聖なる裁き』で聖女の処刑執行が終われば、また権力図が王制側に傾くのかな。向こうの狸って誰なんだろう」
理央は自嘲するように笑って、スコップを土に突き立てた。
「でも、だからってこのまま黙って殺される気はないの。私は今を生きているんだから」
「……そういうところが、実に厄介だ」
「お褒めに預かり光栄」
二人の間に、短い沈黙が落ちた。
そのとき、控えめに走ってくる足音が響く。
「失礼します、聖女様……ご確認いただきたいものが」
親聖女派となった若手の神官が、備品の在庫管理表を差し出した。
理央が受け取ろうとすると、その表紙の端に小さなメモが挟まれているのに気づく。
その紙片には、一言だけ。
『護衛の者は、貴女に関心を抱いています。忠誠か、あるいは別の感情か。ご注意を』
理央は眉をひそめ、紙片を静かに握りつぶした。
「……」
「何か問題でも?」
「ただの伝達ミス。些細な事よ」
あえてそう言って、ジークから視線を逸らした。
今この場で、彼を問い詰めることに意味はない。


