転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

18 引きこもりという名の幽閉

 何万もの人々が、その奇跡を見上げていた。
 誰かが「神が降りた」と呟いた。
 誰かが「聖女は本物だ」と泣いた。
 その瞬間、聖女リオ・アリミヌエという存在は、確かに『奇跡を起こす者』へと変貌を遂げた。

 ★

 窓のない石造りの一室に、静寂だけが満ちる。
 最低限の寝具、そして鉄扉で守られた収監施設というべきだろうか。

「……まぁ、完全個室引きこもりっていう名の、幽閉ってとこね」

(労基に駆け込んでも『宗教法人の内規ですから』って門前払いされそうな待遇……)

 理央は、テーブルに頬杖をつきながら、誰に聞かせるでもなくぼやいた。
 収穫祭から早くも一週間が過ぎようとしていた。

 あの神秘の光が広場を包み、民衆が奇跡を目にしてからというもの、教会内は沈黙と混乱に包まれていた。
 外部からの来訪者は固く制限され、聖女の身の回りの世話をしていた部屋付き侍女の三人も、そしてジークさえも現れなくなった。

「……どうしようかな」

 ぽつりと呟くと、一人の室内に虚しく声が響いた。

 ジーク・オベールレヒト。
 護衛騎士であり、監視者であり、この『理央』という個を見ようとした存在。

 彼が来ない理由は、なんとなくだが想像がつく。
 この聖女の処遇に関して、おおかた王政側と教会側で激しく揉めているのだろう。

「教会は『奇跡の看板』として私を囲い込みたい。王家のほうはなんなんだろな……リオの記録をもうちょっとちゃんと読み込まないと判らない。ただの少女を消したいって、ものすごい執念を感じるわ」

 それにしても、顔も見せないってちょっと冷たくない?
 そんなことを考えていた、その時――。
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