転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!


 石造りの静かな塔の中、時間だけが粛々と流れていた。
 幽閉という名の隔離生活も、九日目を迎えている。

 理央は今日も、アスランに頼んで運び込んでもらった古い記録に目を通していた。
 そこには、かつてのこの身体の持ち主であったであろう少女の手による記録が綴られている。
 筆跡はところどころ幼く、そして時折、花の絵や飾り文字が添えられていた。

「かわいい」

 飾り文字を指でなぞって、理央は微笑んだ。
 アスランに探してもらったところ、リオの残した手記の類は全部で三冊あった。
 そういえば、収穫祭前からあまりにも忙しくてずっと祈祷受付に立っていない。
 自分が抜けてしまってもうまく回っているのだろうか。

(マニュアル化は済ませたから、ある程度は回るはずだけど……)

「聖女様は『神秘の研鑽の為、精進潔斎している』とのことで、皆、納得してますよ」

「精進潔斎ねえ……食べて寝て、食べて寝ての繰り返しなんだけど。運動不足で太るんじゃないの、これ」

「もう少しふっくらされても問題ないかと思いますよ。僕は」

「エイラとセイラとカナンは?」

 部屋付きの侍女たちの名前をあげると、アスランが少し表情を曇らせる。

「セイラ嬢は実家に戻られました。カナンさんも元の場所に。……エイラさんは消息不明です」

「事件?」

「いえ、事件性はありません。彼女は元々『こちら側』の人間なんで」

 横からルキウスが口を挟んでくる。
 そんなネタバレのような事を、自分にペラペラ話していいのだろうか。
 ルキウスとの会話は未だにペースが掴めない。
 ジークともどことなく似た対応をするのだが、冷たさのベクトルが違う。
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