禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
「……ダメだ」


静かな声だった。


「え?」

「魔物は、訓練相手とは違う」


ノアは私たちをまっすぐ見る。


「本気で襲ってくる。怪我じゃ済まないことだってある」

「でも……」

「ダメだ」


今度は、はっきりと。

ルカが口を閉じる。私は何も言えなかった。


正直、私だって興味はある。
ここ数ヶ月、魔法を覚えて、体も鍛えて。私たちはどんどん強くなっている。

自分の力が、実際にどこまで通用するのか。知りたいと思う気持ちはあった。

でも、お兄ちゃんがこんな顔をする理由も、分かる。


「……お兄ちゃん」

「ん?」

「私たち、ちゃんと気をつけるよ」


そう言うと、ノアは困ったように眉を下げた。


「アイリス……」

「……だって、ルカがずっと楽しみにしてるから」

「アイリ……!」


ルカが嬉しそうに私を見る。


「やっぱりアイリはオレの味方!」

「別にそういう意味じゃ___」

「アイリ大好き!」

「ちょ、ちょっと!」


突然抱きつかれて、思わずよろける。


「ルカ、危ないよ」


ノアがすぐに私の肩を支えた。


「ご、ごめん!」

「アイリス、大丈夫?」

「うん……」

「ならよかった」


そう言って、ノアは私の髪についた葉っぱを取ってくれた。


「……もう。二人とも、私を子供扱いしすぎ」

「だって子供だろ?」

「ちょっとお兄ちゃん!」


くすくすと笑うノア。その顔を見ていると、結局怒る気にはなれなかった。


「……分かったよ」


ノアが小さく息を吐く。


「一度だけなら、連れていってあげる」

「えっ!」


ルカの顔が一瞬で明るくなる。


「ほんと!?」

「ああ。ただし、俺から絶対に離れないこと」

「うん!」

「無茶をしない。危ないと思ったら、すぐ逃げる」

「うん!」

「……返事だけはいいな」
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