禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜

004.森の向こうへ

「アイリス、無理はするなよ」

「ハンカチは持った?忘れ物はない?」


玄関先で、父と母が何度も私の荷物を確認してくる。


「そんなに心配しなくても、大丈夫だって」


私は苦笑いした。


「お兄ちゃんも一緒なんだから」

「そうそう。俺がついてるから大丈夫だよ」


隣に立っていたノアが、両親に向かって穏やかに笑う。その笑顔を見て、母もようやく少し安心したように息を吐いた。


今日は、ずっと楽しみにしていた日___初めての魔物討伐。

十一歳になった私たちは、あれから何年も修行を続けてきた。

魔法も、体力も、戦い方も。少しずつだけど、確実に強くなっている。


「ルカくんも気をつけて行ってきてね」


母が振り返ると、ルカはいつものように明るく笑った。


「もちろん!」


そして胸を張る。


「オレがアイリを守るので!任せてください!」

「ふふ。頼もしくなったわね」

「そうでしょ?」


得意げに言うルカ。

……こういうところ、昔から変わらない。
褒められると、すぐ調子に乗るところも。私のことになると、少しだけ張り切りすぎるところも。


「ルカくんがうちに来て、もう何年になるのかな」


父がふと呟いた。


「六年だよ!」


ルカがすぐに答える。


「もう俺たち十一歳なんだから!」

「そうか……もうそんなになるのか」


六年。そう聞くと、なんだか不思議な気持ちになる。

私がルカと出会ったのは、五歳の頃。あの日のことは、今でも覚えている。


___森の中で、ひとりの男の子を見つけた。

ひどく怯えていて。声をかけても、返事すらできなくて。
今のルカからは想像もできないくらい、小さくて、静かな子だった。


最初は、家族とぐれてしまったのだと思った。

でも現実は、全く違うものだった。
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