禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
森の奥へ進むにつれて、見慣れた景色が少しずつ遠ざかっていく。

いつもなら、お兄ちゃんに『ここから先は入っちゃダメ』と言われている場所。

それなのに今日は、その境界線を越えて歩いている。
一歩、また一歩。踏みしめる土の感触さえ、いつもとは違って感じた。


木々の間から差し込む光、風に揺れる葉、遠くから聞こえる、鳥の鳴き声。

知っている森のはずなのに。少し奥へ入っただけで、まるで知らない世界に来たみたいだった。


怖い……でも、それ以上に。


「……なんか、わくわくする」


思わず呟く。

恐怖で胸が高鳴っているのか、それとも、これから始まることへの期待なのか。自分でもよく分からなかった。


「アイリ」


隣を歩いていたルカが、こちらを見る。


「オレから離れるなよ」

「……え?」


いつもの明るい声とは違った。冗談でも、強がりでもない。

真っ直ぐ私を見つめている。


「何かあったら、オレが守るから」

「……ふふ」


思わず笑ってしまった。


「何笑ってんの!オレ真剣なんだけど!」

「だって、ルカがそんなこと言うの珍しくて」

「オレだって、やるときはやるんだよ!」

「知ってるよ」


そう言うと、ルカは少しだけ照れたように顔を逸らした。


「……ならいいけど」


その横顔を見ていると、不思議と緊張が和らいだ。


___大丈夫。
私たちには、お兄ちゃんがいる。そして、ルカもいる。

そう思った、その瞬間。
すっ、と。目の前に、ノアの手が伸びた。


「……動くな」


低い声。いつもの優しいお兄ちゃんとは、まるで別人みたいだった。

身体が反射的に強張る。


「お兄ちゃん……?」


ノアは答えない。ただ、森の奥をじっと見つめている。
その横顔には、今まで見たことのない緊張が浮かんでいた。
< 20 / 48 >

この作品をシェア

pagetop