禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
「ただいまー」


玄関の扉を開けた瞬間、ふわりと温かい匂いがした。


「おかえりなさい」


聞き慣れた母の声を聞くだけで、張りつめていた身体の力が抜けていく。


「……はぁ」


やっと帰ってこれた。

外はもう夕暮れで、窓から差し込む淡い橙色の光が、家の中を優しく照らしている。


「ずいぶんと遅かったわね……って、アイリス!」


母が私の腕を見る。


「その傷、どうしたの!?」

「大丈夫だよ。ちょっとかすっただけ」


心配させないように笑ってみせる。


「かすり傷って……」


やっぱり、お母さんは心配性だ。


「ほら、こっちに来て。ちゃんと手当てするから」

「はーい」


母に連れられて、私は居間へ向かう。

ふと食卓を見ると、そこには温かそうな料理が並んでいた。


「……これ」

「みんな帰ってくるの遅いから、冷めないうちに食べられるようにしておいたの」

「私たちのために?」

「当たり前でしょう?」


母の笑顔に、胸の奥がじんわりと温かくなった。


今日、初めて魔物と戦った。

怖かったし、怪我もした。


それでも___帰ってくれば、ここには大切な人たちがいる。


「ただいまって言える場所があるって、幸せなことだろ?」


父が隣でそんなことを言った。

本当に私は幸せ者だと、改めて思う。


「アイリ、何ぼーっとしてんの?」


ルカが隣から覗き込んでくる。


「疲れた?」

「んー、ちょっとだけ」

「じゃあ、オレがご飯取ってあげる!」

「いや、それくらい自分でできるよ」

「いいって!オレに任せて!」

「……ふふ」


いつも通り、何も変わらない。

今日も、明日も、きっとこんな毎日が続いていく___そう、思ったその時だった。
< 31 / 59 >

この作品をシェア

pagetop