禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜

007.選択

ルカが、連れ去られた。


ほんの少し前まで、温かいご飯が並んでいた食卓と家族の笑い声があった場所。

それなのに今は___倒れた椅子、散らばった食器、床に落ちた料理。壊された玄関から、冷たい風だけが吹き込んでいる。


「……うぅ……」


母が泣いていた。父は何も言わず、そんな母の背中を撫でている。

でも、父のその手も震えていた。


「……」


誰も、何も言わない。

さっきまでいたはずのルカだけが、いない。


「……ルカ」


名前を呼んでも、返事はない。当たり前なのに、胸がぎゅっと締めつけられた。


あの時の、ルカの顔が頭から離れない。

怯えたような目。必死に私の名前を呼んだ声。


___アイリ。


「……助けないと」


気づけば、私は立ち上がっていた。


「アイリス」


後ろから腕を掴まれる。


「どこに行くんだ」

「決まってるでしょ」


振り返る。


「ルカを助けに行くの」

「……駄目だ」

「なんで!?」

「今のお前じゃ、あいつらには勝てない」


……言葉が、出なかった。

分かってる、そんなこと。
あの人たちの強さは、私だって見た。私の魔法なんて、まともに通じなかった。


それでも。


「……なら、お兄ちゃんも来てよ」


ノアを見る。


「お兄ちゃんなら、あんな奴ら――」

「アイリス」


静かな声だった。

怒っているわけでもなく、ただどうしようもなく苦しそうだった。


「俺だって助けたい」

「だったら……!」

「でも、行けない」


その一言が、胸に突き刺さった。


「……どうして?」


ノアは答えない。


「なんで行かないの?」

「……」

「ルカだよ?」


声が震える。


「ずっと一緒だったじゃん」
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