禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
五歳の頃に出会って、一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に修行して。今日だって、三人で森を歩いた。

なのに、どうして。


「……見捨てるの?」


ノアの瞳が揺れた。


「俺だって、そんなことしたくない」

「じゃあ___」

「でも現実を見ろ」


初めてだった。ノアが、こんな声を出したのは。


「俺たちが今追いかけたら、全員捕まる」

「……」

「相手は俺たちより強い。何のために、どうしてルカを狙ったのかも分からない。どこへ連れていったのかだって、分からない」


一つ一つ。逃げ道を塞ぐように、現実を突きつけられる。


「それでも今から行けば、まだルカを助けられるかもしれないじゃん……!」

「助けられないかもしれない」

「……っ!」

「それどころか、アイリスまで失う可能性がある」


その言葉に、息が詰まった。


「その選択だけはできない」


ノアの手が、私の肩を強く掴む。


「ルカを見捨てたいんじゃない」


その声が、少しだけ震えていた。


「……俺は、アイリスまで失うのが怖いんだ」


初めて見た。お兄ちゃんのそんな顔。

いつだって優しくて、いつだって私たちを守ってくれて。何でもできる人だと思っていた。


でも。違った。

ノアだって、怖いんだ。

ルカを失うことが、私まで失うことが。


それでも___


「……私は」


涙が頬を伝った。


「私は、ルカを一人にできない」

「アイリス……」

「ルカ、怖がってたもん」


声が震える。


「あんなルカ、見たことない……」


いつも笑って、何があってもずっと私の隣にいた。

そんなルカが、あの時だけは明らかに怯えていた。


「……あんな顔してたのに」


唇を噛む。


「私、何もできなかった」


魔法も、力も。何一つ。


「だから……今度は私が助けるの」

「……お前一人に何ができる」
< 35 / 48 >

この作品をシェア

pagetop