禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
背後から低い声に、反射的に振り返る。

腰を落とし、いつでも魔法を使えるように構えた。


「誰……!」


木々の向こうから、ゆっくりと人影が現れる。

淡い紫色の瞳に、左目に残る大きな傷跡。


「……あ」


見覚えがある。


「この前の……」

「……覚えてたんだな」


相変わらず、無愛想で目つきが悪い。


「そりゃ覚えてるよ」


思わず呟く。


「感じ悪かったし」

「……」


しまった。声に出てしまっていたか。


「……お前」

「な、何?」

「口悪くなったな」

「誰のせいだと思ってるの?」

「……俺のせいじゃないだろ」

「絶対そう」

「……面倒くさ」

「こっちの台詞なんだけど!」


思わず声を張る。


……なんなんだ、この人。

前に会ったときもそうだった。嫌な言い方ばかりするくせに、なぜか私の怪我にはすぐ気づく。


「……で」


彼が私の指を見る。


「こんなところで何してるんだ」

「見れば分かるでしょ。野宿」

「一人で?」

「そうだけど」


彼はしばらく黙ってから、私の荷物を見渡した。

火、食料、簡素な寝床。そして、怪我をした指。


「……お前、馬鹿?」

「またそれ!?」

「こんな森で一人で寝るつもりか?」

「仕方ないじゃん」

「魔物が出たら?」

「戦う」

「夜は視界が悪いし、食料だって少ない。これじゃ持って数日だろ」


何も言い返せない。

正論ばっかりで、悔しい。


「じゃあ、どうしろっていうの」


彼は小さく息を吐いた。


「手、出せ」

「なんで?」

「いいから」


警戒しながら、言われた通り手を差し出す。

彼は私の指先を確認すると、腰につけていた小さな布を取り出した。


「こんなの持ってたの?」

「当たり前だろ」


そう言って、彼は慣れた手つきで傷口を覆い始めた。
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