禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
その手つきがあまりにも優しくて、びっくりした。

意外だ……もっと乱暴な人だと思ってたのに。


「……何」

「いや」


彼が顔を上げる。


「手当て、上手なんだなって」

「……普通だろ」

「普通じゃないよ」

「……あっそ」


そっぽを向いたその耳が、ほんの少し赤く見えた。

……気のせいかな。


「ありがと」

「……別に」


彼は何も言わず、ただ焚き火の向こうから私を見ている。

その瞳は相変わらず冷たく見えるのに、今は少しだけ___優しく見えた。


「……ところで、お前こんなところで何してるんだ」


その問いに、胸の奥が痛んだ。

ルカ、ノア、被検体。頭の中に、いくつもの言葉が浮かぶ。


「……人を探してるの」


それだけ答えた。

彼は何も聞かず、静かに私を見つめる。


「……そうか」


それだけ。それ以上は、何も言わない。

でも___なぜか私は、この人にはいつか話してしまうような気がした。


まだ、このときの私は知らなかった。

この森での再会が、これから始まる長い旅の___最初の、小さな分岐点になることを。
< 43 / 48 >

この作品をシェア

pagetop